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「話題」=ニーマイヤー建築で食べる

グルメクラブ

2月4日(金)

 今度パウリスタ通りの起点の方に「ロボコップ」ができるゼと友人がいった。
 なんだい、それ?
 あの映画に出てくるような未来的なビルだ。
 建築家、だれよ。
 ルイ・オオタケ。
 あー、日伯総合センターの。ブリガデイロ・ルイス・アントニオ通りの「スイカ」もそうだ。ホテル・ウニッキだっけ。
 お。それじゃ、彼の設計したオオタケ・トミエ・インスティチュートは何て呼ばれているかね。
 さあ。
 「カランボーラ(ゴレンシの実)」。
 目立つ建物はあだ名がつきやすいものだ。オオタケさんの意匠に限った話ではない。ニューヨークのエンパイアステイト・ビルを模したあのバネスパ・ビルでさえ、巷では「ウエディングケーキ」だ。
 クイズを続けよう。彼はいった。「S」の異名をとるビルとは。
 オスカー・ニーマイヤーの、コッパン(イピランガ通り200)だろ。波がうねっているような外見。千百六十の部屋に、約五千人が暮らしている。中華料理のファストフード、クリーニング店、美容室カルト教団の集会場まで備える複合施設。「人口」を考えればちょっとした町だ。輸出用コーヒーが飲める「カフェ・フロレスタ」もここで営業しているね。
 正解。ほかにはどんなニーマイヤー建築がセントロにあるか。
 バロン・デ・イタペチニンガ街255に面したビル。名はカリフォルニア。支柱が「Y」の形。
 それなりに歩いてるな。内部の見所はカンジド・ポルチナリにしては恬淡とした作風の抽象壁画だ。一階のめし処ではレストラン・ランショネッテ「ハイチ」。ここのカタリーナ風リゾットが好きだ。安い赤ワイン一杯とパルメザンチーズの欠片を前菜に頼むのを定石としている。
 一度も入ったことない。
 あっそ。では、「インベーダー」ビル知ってるか。
 エッフェル・ビル(レプブリカ広場177/199)のこと?
 むかし流行したインベーダーゲームのキャラクターに似ているよな。
 わたしもその見解に径庭はない。「凸」型のビルだ。正面装飾に配している丸穴を不規則に開けたカベはカリフォルニア・ビルにも見当たるね。五〇年代のニーマイヤーはこのアクセサリーを随所に用いている。えっ、どうだ。
 むむ。
 テラスのポルキロ・レストラン「テラッソ・ノブレ」が穴場だ。各国料理を日替わりでそろえ、屋外で、広場を上から眺めながらの食事を享受できる。ただ、商業向けに設計されていない印象を受けるね。やけに広い。
 住人の共同スペースだったのだろう、多分。ニーマイヤーは「共産主義者」だから、サロンなど公共空間の面積をより割こうとする。そう仄聞している。
 は、なるほど。
 最後。と彼はいった。イピランガ通りとカスペロ・リベロ通りの角に位置する、波型「S」ビルを真っ二つに分断した感じの容姿といえば。
 知らんねぇ。
 モントレアル。「C」の格好のビルで、入り口の脇にある六〇年から続くバール「ミニョン」が素敵だ。カウンター席しかない。店内を飾るネオンサインが懐古趣味の世相に新鮮だし、あせた水色の壁が通俗的でしびれる。生野菜と温野菜半々とか、細かい注文を出すのがここ流。ビルの地階にある壁画はディ・カヴァルカンテ。しかも完全なアブストラクト。
 珍しいね。
 ニーマイヤー建築では、トリアングロ・ビル(ジョゼ・ボニファシオ街24)にも、カヴァルカンテの壁画が残っている。オールガラス張り、サンパウロで最初のモダンビルだ。一階にフルーツジュースとサンドイッチの店が三軒も入っている。でもな、ニーマイヤー自身はこうした五〇年代に手掛けた一連の建築を気に入ってないらしいゼ。
 初耳。S、Y、凸、Cと単純記号建築だから、オレでも設計できるって門外漢にいわれたりするんじゃないの。
 ま、五〇年代以降こそはクリチーバの美術館は「目」、ニテロイのそれは「宇宙基地」と具象化してきてはいるがね。
 リオの日系団体が移民百周年記念碑のデザインを依頼しているらしいけど、何の形に似ていて、どんなあだ名がつけられるのかなぁ。楽しみ。
 だがなー、ジャポンの「J」、「細い目」というのはあってはならないね。

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