健康広場
4月6日(水)
毎月の保険金が安い上に質の高い医療サービスが受けられることを、誰しもが望んでいるはずだ。しかし、高齢化の進行や先進国並みの医療コストなどのため、健康保険のシステムに綻びが見え初めている。最大手のブラデスコ(bradesco)、イタウー(itau)でさえ経営は楽でなく、保険会社の吸収・合併など統廃合も進んでいるようだ。健康保険は果たして、今のままで大丈夫なのか。その構造的な問題に迫った。
〇四年十二月二十三日。サンパウロ市内の病院に衝撃が走った。国家保健監督庁(ANS)が、健康保険大手インテルクリニカス(interclinicas)の法廷外解散を決定したのだ。裁判所から破産宣告を受けたのと同様の効果を持つもので、同日付の官報に公示された。
加入者数十六万六千人。民間では、サンパウロ市内で片手に入る規模だった。負債総額は、一億五千万レアルに及んだ。
同社は昨年、経営不振のため、被保険者を他社に移す計画案を練った。これに対して、約五千八百万レアルの債権を持つオズワルド・クルース病院が猛反発。裁判問題に発展していた。
政府は同年十月十八日にインテルクリニカスに介入して、資産状況などを調査。(1)負債の支払い能力があるか(2)被保険者へのサービスが維持できるか──などを評価した。経営再建は不可能だと、結論が下された。
■□
「何となく、嫌な感じがしていたんですけど…」。具志堅茂信援協事務局長は、同社経営破綻の報にうなだれた。日伯友好病院(大久保拓司院長)の未回収金が、百万レアルという単位で残っているからだ。
医療費の滞納が目立ち始めたため、昨年から救急時や、診察・治療費を前払いした時など一定の条件の時にだけ、同社の保険を受け付ける対抗措置に出ていた。近く改めて、交渉しなければならないと思った矢先の出来事だった。
保険会社の未払い金は相当の額に上っており、理事会で病院運営の在り方を疑問視する声もある。インテルクリニカスを含め、早急に手を打たなければならない問題に発展しそうな勢いだ。
「病院が持つ債権全体から見れば、騒ぐほどの額ではないですよ」。大久保院長は、大きく構える。確かにオズワルド・クルースに比べれば、痛手は少ない。だが、不良債権化して回収不能になれば、それはそのまま損失になってしまう。
■□
インテルクリニカスの清算は、消費者保護を最優先。被保険者は、サウーデ・ABCが引き受け手になり、サウーデ・サンパウロという名称でこれまで通りのサービスを受けられることになった。
保険金も従来と同額で、カレンシア(=carencia、保険サービスが給付されるまでのある一定の空白期間。病気や傷害の種類によって、期間の長さが異なる)もない。
これに対して、納得出来ない医療機関も少なくない。負債を返済するのが、まず先だというのだ。「前の借財が残っているままで、加入者の応対をしろと言われてもちょっと困る」と具志堅事務局長。友好病院も、サウーデ・サンパウロを契約対象から外した。
インテルクリニカスの従業員の給与支払いは、遅れていた。政府は、同社の資産を確保するため、今年二月に同社系列の三社も整理することに決めた。
結局、債権者の保護が後回しにされる形になった。大口債権者は、団体を組織して圧力をかける構え。具志堅事務局長によると、友好病院も入会を視野に入れているという。「我々への保障は、最後になるのでしょう」。強気の大久保院長も、不安をのぞかせた。(つづく)