健康広場
5月18日(水)
フェリアード(休日)は、てっきり海岸で過ごすものと思っていた。山間部も捨てたものじゃないかもしれない。豊かな自然環境に身を委ねることで、植物の持つ「癒し」の効果を受けられるからだ。運が良ければ野生動物に出会えるし、森林セラピーは最近の流行でもある。
波の音を聞きながら海辺に寝そべるより、山歩きのほうが心身ともにリラックスできるかもしれない。
南米で山と言えば、標高平均二千メートルのアンデス山地を抜きに語れないだろう。ペルー・ビルカバンバは、カザフスタン・コーカサス、パキスタン・フンザと並んで世界三大長寿村として知られる。
これらの地方に共通しているのは、カリウムを含むアルカリイオン水を飲用していることだ。ビルカバンバは、野菜や果物の原種も多い。
昔から人々の健康を支えてきた野菜に、ヤーコン(yacon)がある。インカ帝国時代には栽培されており、ナスカ文明(紀元前200~600年)に遡る説があるほど、伝統的な食文化だ。
博研の沖真一さんは「日本でも、新顔の野菜として人気が高い。それに、今が旬です」と一押し。自宅を訪れると、ヤーコンのオカラでもてなしくれた。「梨のような歯ごたえでしょう」とニコリ。
キク科の植物で、ダリアやタンポポと同じ仲間だ。地上一・五メートルほどに伸び、地下に十個ほどの塊根(イモ)がつく。一般にイモの部分を調理。サラダ、ジュース、天ぷらにする。葉も茶として有用だ。
オリゴ糖の含有量が、可食部百グラム当たり八グラム。ゴボウ(三・六グラム)、タマネギ(二・八グラム)をはるかに凌ぐ。まさに「オリゴ糖の王様」だ。腸内のビフィズス菌を育てて、整腸機能を改善。便秘を解消する。
ヤーコンの働きは、それだけに留まらない。抗酸化力があり、動脈硬化の進行を抑制。低カロリーでダイエット食品になり、糖尿病患者にお勧めだ。
アジアでは、食糧難の深刻な北朝鮮がヤーコンの栽培に熱を入れているらしい。日本には二十年ほど前に、ニュージーランドから持ち込まれた。
沖さんは「長い歴史を誇るものの、ペルーの外にあまり出回らなかった」という。同じアンデス原産のジャガイモが、世界に広まったのとは対照的だ。「調理方法が、分からなかったのだろうか」。
フジモリ政権下(一九九〇─二〇〇〇)のペルーで、左翼ゲリラや麻薬ビジネスの取り締まりが強化された。政府は農家の現金収入を図るため、コカインに代わる農作物の一つとして、ヤーコンの栽培を奨励した。
二重国籍を持ち、日本に帰国滞在中のフジモリ前大統領。今が食べごろのヤーコンを思い出しては、ペルーへの凱旋帰国を夢見ているかもしれない。