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ビール対決=ペンギンVSクマ

グルメクラブ

5月13日(金)

 端午の節句が終わると、日本人の私としては次は七夕の番だなと思う。幼稚園の頃、皇太子がファンを公言された往年のアイドル柏原芳恵に似た顔立ちの保母は、鯉のぼりを作り終わり一息つく私たちに向かって、「さぁ、今度は吹流しと短冊の準備ですよぉ」と言って優しく目を細めた。「♪屋根より高い鯉のぼり」から、「♪笹の葉さらさら」へ、旬の童謡指導にも余念がなかった、その記憶の刻印のせいだろう。
 ブラジルでは六月、アントニオ、ジョアン、ペドロのカトリック聖人祭が立て続けに行なわれるが、今年は六月祭より七夕の季節が待ち遠しい。リベイロンプレットまで、現地日系団体主催の七夕祭りを見学に行く計画がある。実現すれば数年ぶりだ。真夏を思わせる日差しの中、内陸特有のうん気をはらんだ風に揺れる色鮮やかな吹流しは、ブラジルの七夕ならではのかけがいのない光景である。
 前回おもむいたときは会場内で、スキヤキをおおいに食べた。公園に特設されたレストランで大勢のブラジル人と食卓を並べた。スキヤキがこんなにも人気があるとは思いもよらかなった、炎天に煙はもくもく上がり、逢瀬中の織姫と彦星は顔をしかめむせていた。
 その後老舗の名物バー「ペングイン」に向かい、自慢の生ビールを飲んだ。さしたる感動はなかったので、今年は訪ねる予定はない。代わりに、オリジナルビールの生産・提供で注目の「コロラド」を詣でるつもりだ。以前この欄で、ビール評論の世界的な権威マイケル・ジャクソンが、かつてブラジルに取材に来ていると書いた。リベイロンプレットでは「コロラド」に立ち寄っている。そのオーナーはブラジルビール小規模醸造所(ミクロセルベイジャリア)協会の会長として知られる。
 店ではピルスナー(淡黄金色で爽快な味わいが特徴)、トリゴ(苦味のある小麦の白色ビール)、インディアペールエール(深いコクが楽しめる)の三種が飲め、ジャクソンは、そのペールエールに対し「三つ星」を贈ったほどお気に召された。
 ところで地ビールブームは、七〇年代以降「ザ・クラフト・ビアー・ルネッサンス」ムーブメントに沸いているアメリカでとりわけ盛んである。約千四百の小規模醸造所が確認されるという。「ビール王国」ドイツにおよそ八百、そして日本には三百近くが存在し、その風潮はブラジルにも押し寄せている。
 六、七十前後とまだ少数であるうえ、生ビールの生産に限定しているところが多いため、瓶または缶に詰められた小売り商品は数種に限られるが、消費者需要は確実に上向きだ。ボエミア社が一昨年に限定販売した「ボエミア・ウェス」が好評を受け、生産継続を決めたのはその好例だろう。バーデン・バーデン(サンパウロ州)、ノー・デ・ピニョ(サンタカタリーナ州)、アイゼンバーン(同)、シュミット(リオグランデドスル州)、デヴァッサ(リオデジャネイロ州)と、クラフト精神が発揮された有力地ビールが相次いで各地に誕生している。
 その主流は〃常温〃がウマイ、冬に最適な上面発酵のビール。どうやら一部ブラジル人も夏のビールと冬のビールの飲み分けを身につけてきているらしい。冬の七月でも、リベイロンプレットでスキヤキを食べるなら、夏のビールがいいけどね。

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