グルメクラブ
4月26日(木)
不調和の中の調和とでもいうのか。「美は乱調にあり」の造型感覚で世間の度肝を抜いたスペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館を設計した建築家フランク・ゲーリーが、酒瓶のデザインを手掛けた。
ポーランドを代表する銘柄で世界二位の出荷量を誇るウオッカ・ビボロワ(wyborowa)に捧げた、ゲーリーの「新作」が話題だ。酒瓶の常識を無視した仕上がりはさすが鬼才。写真では分かりづらいが、二重構造になっているようにも見え、その建築同様、ヒネリ・ウネリを利かせた脱構築的フォルムは類を見ない。
ビボロワは「選ばれたもの」を意味する。厳選されたライ麦を原料にし、二度にわたって蒸留。白樺の炭でろ過し、癖のないサラリとした舌触り、爽快感のある味を実現している。従来のボトルデザインはラベルも含めて凡庸だった。ゲーリーボトルの採用で付加価値は格段に増した。
サンパウロでの発売記念会は十日、ラパのモード学校SENAC MODAが会場となった。というのも、ブラジルのファッション界を引っ張るデザイナーの一人、アレシャンドレ・ヘルシコヴィッチがメーカーとタイアップしてパーティーを企画したからだ。モデル、スタイリストらカタナカ職業の関係者が多く集い、その門出を祝った。
最近続々と新しい商品が輸入されブームのウオッカは、他の蒸留酒に比べると、無味無臭が身上だ。エチルアルコール以外の成分は、水を除けばほとんどないに等しいと言っていい。ニュートラル(中性的)がキーワードの今日。先端を行くファッション関係者には、ふさわしい飲み物なのかもしれない。ウオッカ自体に際立つ個性がないため、果物や炭酸飲料水で多彩な味を演出できる点も、クリエイティブな人々の遊び心をくすぐるのだろう。
こうして舶来の最新ウオッカがどんどん入ってくることで、同じ蒸留酒のカテゴリーに入るカシャッサのメーカーが刺激を受けている。風味はもちろん、ボトルデザインの進歩も著しい。特に、輸出を重視するメーカーの商品には、凝った意匠が目に付く。ギフト・オブ・ゴッドやGRMのボトルデザインは、ブランデー、オリーブオイル、香水、高級ウイスキーの瓶を参考にしたと思われる、こだわり派の代表格だ。
カシャッサはもともと、その派手なラベルにも地方独特の素朴な「味わい」があって、コレクターには垂涎の的であるが、最近では、著名画家が出かけるケースも見られる。エスピリト・デ・ミナスの特別品は、アルデミール・マルチンスの作。果物のカジュやカンガセイロ、セルタォンの風景などノルデステをテーマにした絵が多い画家が、バロック教会を題材にしている珍しいものだ。
カシャッサが売り物のバーで試飲に励んでいるとたいてい、「日本人か、オマエ? 貿易関係者か」と訊かれる。続けて、「本当にカシャッサが好きで輸出したいなら、日本人好みの商品をプロデュースする手もあるぜ」と、アドバイスされたりする。サトウキビの産地を選定し、蒸留法や風味付け、熟成に使用する樽の素材などを検討する。で、ボトルとラベルのデザインを誰に依頼するか――。一緒に考えて投資してくれる人はいませんか。