ホーム | アーカイブ | 強烈な日差しは肌の敵=紫外線カットに万全を=日焼けの蓄積が身体に害=皮膚がん患者数=今年新たに12万人と推定

強烈な日差しは肌の敵=紫外線カットに万全を=日焼けの蓄積が身体に害=皮膚がん患者数=今年新たに12万人と推定

健康広場

6月1日(水)

 皮肉にも、熱帯の太陽が危ない。強烈な紫外線の影響で、皮膚を傷つけてしまいかねないからだ。各種統計によると、ブラジルは皮膚がんの割合が高い。良・悪性合わせて、今年新たに約十二万人が罹患すると推定されている。がんは高齢者がかかるものと、思い込んでしまいそうだ。若いころからの日焼けが蓄積し、老後になってがんに移行する恐れも。農業移住として渡った多くの一世。過去に、炎天下の中で農作業を続けた人もいるはず。また、連休を海岸で過ごす機会も少なくないだけに、肌の様子に目を向けたい。

 「冷や冷やしています。すぐに、切除するつもりです」。ある日本人男性(67、飲食業)は、動揺を隠し切れない。
 日伯友好病院(大久保拓司院長)で五月二十二日、皮膚がんの発見・予防キャンペーンがあった。担当医から、背中に黒点が三つあると告げられた。この日、初めて分かったことだ。
 八〇年代、子供が幼かったころ、毎週のようにサントスに出掛けた。日焼け止め対策は、全くしなかったという。「何もないと思っていたから…。ここまで足を伸ばして幸運だった」。
 太陽光線は、骨格やビタンミンDの形成、生活リズムにとって不可欠。ただ、強烈な日差しは、無防備な体に悪影響を及ばしかねない。崎山ヨシミツ・マウロ医師長(三世、48)は「日光浴が、悪いわけでない。過度の日焼けを、避けたらよい」と助言する。
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 皮膚は大きく三つの部分に分けられ、表面に近い部分から表皮、真皮、皮下組織と続く。これらを構成する細胞が悪性化したものが皮膚がんで、種類が多い。代表的なのは、有棘(ゆうきょく)細胞がん、基底(きてい)細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)。
 有棘細胞がんは、肉の固まりのように皮膚が盛り上がってくる。比較的大きく、不揃いな形の紅色で、表面にただれや潰瘍を伴って出血しやすい。
 基底細胞がんは、ほとんどの発生場所が頭部と顔面。黒色から黒褐色の軽く盛り上がった皮疹で、ほくろと勘違いしやすい。日本人に多いタイプだという。
 放置すると、徐々に肥大化して腫瘤(しゅりゅう)を形成。中心部が陥没して潰瘍となり、周辺部は黒い丘疹(きゅうしん)が堤防状に縁取る。痛みやかゆみなどの症状はない。
 上記二種に比べ致死率が高いのが、メラノーマ。皮膚の色と関係するメラニン色素をつくる細胞(メラノサイト)か、母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化したと考えられる腫瘍で足底に起こりやすい。新たに発生したほくろが、直径五ミリ以上になったら要注意だ。放置すると、早期に所属リンパ節に転移。さらに肺、肝臓、脳など全身の臓器に広がる恐れがある。
 いずれのがんも進行具合や症状によって、外科手術(切除)、化学療法(抗がん剤投与)、放射線療法などが施される。友好病院では、外科手術と化学療法が行われている。
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 有棘、基底細胞がんとも、紫外線によるダメージが大きな要因。メラノーマの発生原因は不明だが、やはり紫外線と関係しているとする見方がある。キャンペーンではプロジェクターで患部を見せながら、参加者を啓蒙。「炎天下を歩く時は、帽子をかぶったり日焼け止めクリームを塗るなどして、肌を守ってほしい」などと訴えていた。
 (1)海水浴(2)サイクリング(3)農作業・庭仕事──が肌を痛めやすい。長時間にわたって直射日光を浴びないことが、皮膚がんの予防手段。日焼け止めクリームの効果は、二時間程度だという。
 視覚的に異常を見分けやすいので早期発見が可能。年一回は、人間ドックを受けるのがお勧めだ。白人は黒人に比べて紫外線に対する抵抗力が弱く、皮膚がんの分布図をみると、北部より南部に患者が多い。日本人も慢心出来ない。
 今年新たに、メラノーマに男性二千七百五十五人、女性三千六十五人、そのほかの皮膚がんに男性五万六千四百二十人、女性五万六千六百人がかかると試算されている。実際は、これを上回る見込みだ。

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