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ブラジルワインの「フェノメノ」誕生か

グルメクラブ

6月10日(金)

 まさかアンタが。フォーリャ紙五月二十五日付インタビュー記事で、趣味を訊かれたフェノメノ(怪物)の異名をとるサッカーのロナウドが「ワインです」と笑顔で答えていた。
 「その歴史とか、文化が好きなんだ。講習会にも通いたい」。トレードマークのすきっ歯丸出しの写真だ。
 モデル嬢との「結婚」がご破算になったり、代表チームでのプレーを辞退すると言って、最近は「場外」の話題で世間を騒がせているが、このワインファン発言にも驚いた。
 好きな銘柄は? の問いには「スペインワインのヴェガ・シシリア」。まあ良い年の物なら、「百八十ユーロ」を払ってもいいという。約五百四十レアルだ。昨年二十七億円を稼いだスターらしい発言だった。
 ただ、「百八十ユーロ」で買えるヴェガはせいぜい二級品。スペイン王室御用達とされ、かつて英国エリザベス女王の大量注文を断ったメーカーだ。その特級にもなると年代によっては、十万円を軽く超える。
 フランス・パリ郊外の古城で挙げたモデル嬢との「結婚」披露宴で、ボルドーやブルゴーニュの仏銘酒を無視してまで、ヴェガを振る舞ったくらい、ロナウドは気に入っている。もう一つの趣味のゴルフは、天性の運動神経のおかげでかなりの腕前らしいが、今度はワイン通を目指したいとは。あのでっぷり体形でいわれると、三十路を目前に、オヤジ化が急速に進んでいる感じもするなぁ。
 それにしても、ロナウドが希代のストライカーであることには変わらない。その逸材に敬意を表して贈ったら、宣伝効果が期待できそうなブラジルワインがいま、関心を集めている。親子三世代・九十年以上の歴史を誇る大手サウトン社(リオグランデドスル州)の新作「タレント」だ。非凡な仕上がりは、その名に決して負けていない。
 標準小売り価格六十五レアルは、同社の大衆向け主力ワイン・シャリゼの十倍以上。ライバルのミオロ社が、醸造コンサルタントの超大物フランス人ミシェル・ロランを「監督」に招き、最近相次いで発表した高級路線のワインに触発された、と言えるだろうか。
 生産に先立って、アルゼンチンワインの名門トラピチェから醸造家アンゲル・メンドンサを引き抜いた。これまで、シャンパンやシャルドネ種の白ワインに定評があった同社だが、赤ワインはやや劣る印象が強かった。「タレント」は、そんなイメージからの脱却を狙う老舗の意欲作だ。
 試行錯誤の結果、カベルネ・ソーヴィニオン六割、メルロー三割、タナ一割のブドウ品種配合に行き着いた。八百五十ドルのフランス製オーク樽に一年間寝かせた香りは松、タバコに例えられる。風味の余韻に持続力があり、「現時点では国産一の味」と、高得点を付ける評論家が多い。
 あとは、その広告塔に、「タレント」繋がりという意味で、「ワイン愛好家」のロナウドを起用すれば、輸出促進も期待できると思うのだが、どうか。

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