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システム崩壊の危機―健康保険―=連載(7)=国民の8割はSUS利用者=無料で難病を網羅するも…

健康広場

6月29日(水)

 リオデジャネイロ市の公立病院前で泣きじゃくる女性の写真が伯字紙に掲載されたのは、一、二カ月ほど前だっただろうか。救急の子供を連れてきたのに、病院が応対してくれなかったという。
 医薬品の不足や検査機器の故障など、リオ市の医療保健行政は悪名高い。劣悪ぶりを見かねて、連邦政府が介入するぐらいだ。
 リオ・グランデ・ド・スル州の州立病院では最近、手術の順番を先に割り込ませるため金品を受け取っていたと、医師や州議員の補佐官など十一人が告発された。もちろん、全国の公立病院のすべてが前記二例と同じではないだろう。が、どことなく頼りないことは確か。
 フジイ・ツトム日伯友好病院技術部長は「公立と民間の両方で働いている医師もいるので、医者のレベルに特に差があるわけではない。ただ公立の場合、財政難のためか、医療機器が古い。だから、病気が見分けられなかったりするんですよ」と顔をしかめる。
 同技術部長によると、民間の健康保険に加入しているのは、一億六千万人(二〇〇二年国政調査)の国民のうち三千五百万人ほど。
 残り一億二千五百万人は、保険料無しのSUS(統一保健システム)を利用。保健所や公立病院、一部大学、血液銀行、委託を受けた民間病院で診察・治療を受けている。
 診察を受けるのに、長蛇の列が出来ることは周知の通り。例えば、グロリア病院(サンパウロ市リベルダーデ区)では早朝から患者が押しかけ、自動車の列がバロン・デ・イグアッペ通りまで及ぶ。ジャカレイ、イタクァケセツーバなど市外のナンバープレートも。
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 八八年憲法は「保健はすべての国民の権利であり国家の義務である」(百九十六条)と明記。「保健事業は統一された一連の施設で運営される」(百九十八条)。この規定に基づいてSUSが創設され、法令8080号と8142号で法制化された。
 運営は、社会参加型(憲法百九十八条第三項)。保健会議と保健顧問会が設置されている。前者は少なくても四年に一度、利用者、政府、専門家、サービス提供者の代表を集めて開かれるもの。現状を評価し、市、州、連邦レベルで行政指針を提言する。
 後者は、常設された評議会。保健会議と同じく、利用者、政府、専門家、サービス提供者の代表で構成されている。保健政策を監督、監視。修正案を提案しながら運営規則を決定し、市、州、連邦の三つの領域における権限者に、認可を求めていく仕組みだ。
 二十世紀初めから六〇年代の終わりごろまで、ブラジルの保健行政はコレラやマラリアなど大量死を招く病気の根絶運動に注力してきた。
 個人の病気治療を優先するようになったのは、七〇年代に入ってから。労働手帳を所持している者を対象にした、国家医療・社会保障院(INAMPS、七七年)などが開設された。
 保健分野での不平等を改善するのが、SUSの大きな目的の一つ。どのような市民であっても、無料で(1)診察(2)検査(3)入院(4)治療のサービスを受けられる。症状がある無しに関わらず、HIV感染者やがん患者も網羅。世界でも誇るべきシステムだ。
 SUS向けの予算は、市、州、連邦政府の責任。それぞれが計上すべき最低ラインは、国内総生産(PIB)や税収を基準に法律で定められている。
 例えば二〇〇一年は、計四百四億レアル。うち二百二十二億(五五%)レアルが連邦政府、七十七億レアル(一九%)が州政府、百五億レアル(二六%)が市だった。
 委託先の民間病院に支払われる金額は、クストを大幅に下回っており、重い負担がのしかかるという。        (つづく)

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