グルメクラブ
2005年7月22日(金)
来週には南部から寒波が来襲します。なんてニュースを聞くと、からきし寒さに対する抵抗力のないわたしは前途の多難を予感して、雨に濡れた子犬のようにブルブル震えていた。
そんな生来の虚弱体質男がこの冬の寒い時期でもいいから、カネとヒマさえあれば、すぐに南へ飛んでゆきたいと考えている。というのも、BOX32の存在が気になって仕方がない。
サンタ・カタリーナ州のフロリアノーポリス市営市場にある、魚介類を中心にした絶品のつまみを出す酒場と巷間うたわれるバールだ。四月には『成功の味』の題名で、創業一九八四年来の軌跡を綴った本を出版。副題は「十五平方メートル(の店)がいかにして世界に知られるようになったか」。
十五平方メートル。ホテルオークラ新潟のエコノミーシングルルームとちょうど同じだ。市場の、ありふれた狭いバールが広いブラジルでも五指に入るだろう有名店に成長し、海外のメディアにも取り上げられるようになった秘密は何か。現場に赴いて、その謎に迫ってみたい。熱い新聞記者魂が寒波など吹き飛ばしてしまう。
現在の店舗面積は三倍弱拡張され、メニューを七カ国語で表記しているらしい。気になる料理は百グラムのエビが入ったパステルや生ガキ、イセエビ、カニ。輸入品ではノルウェー産タラ、キャビアに加え、エスカルゴまで作って出すという充実ぶり。まさに珍味の万国博覧会だ。酒の方も、多種多彩。国内外八百銘柄の商品を揃えているそうだ。
最近の話題は、名物の魚介類料理によく合う、ケルシュを提供し始めたことだ。ドイツ・ケルンが発祥の上面発酵ビールだ。ホップの味が効いた軽い飲み口が特徴。偶然にも、その創業年に第一回が開かれたビール祭り・オクトーバーフェストで知られる同州ブルメナウ市のアイゼンバーン醸造所が生産し、特別に卸している。
ブルメナウ市はサンタ・カタリーナ市から百六十キロ。人口二十六万ほどの街だが、わたしにはとても読めないドイツ語の名前が付けられた四つの本格派地ビールに出会える。BOX32のついでに訪ねてみるってのもいいねえ。次回のサッカーのワールドカップは来年ドイツで開催される。まず「ブラジルのドイツ」に乗り込んで準備運動しておこうか。