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マテ茶=牧童の活力源

健康広場

2005年8月10日(水)

 鮮やかな服に大きな拍車をがちゃつかせ、腰にナイフのような短刀をさしている。一般に背丈は高く、端正な容貌だが顔つきは高邁で不敵だ。
 若き日のチャールズ・ダーウィン(一八〇九─八二)は一八三一年から五年間、英国海軍の測量船に同乗。南米大陸や南太平洋の島を巡り、動植物の調査記録を日記体で残した。「ビーグル号航海記」の中で、牧童(ガウショ)の姿に喫驚した様子を綴っている。
 「都会に住む人間たちよりも、ずっと人間が上だ。いつも気前が良く、親切で客をもてなす精神を持っている」。ダーウィンはどうやら、牧童を田舎者だと思い込んでいたらしい。イメージと現実にかなりのギャップを感じたことが、行間からうかがわれる。
 牧童は野生化して自然繁殖する牛馬を捕獲、家畜化するのが仕事。馬に乗って一日中牛馬を追い回すには、タフでないと出来ない。ラプラタ川を挟んだ地域はスペインとポルトガルの国境紛争が絶えず、勇猛果敢でなければ生き延びられなかったはず。
 「ばかていねいなお辞儀をしながら、仕儀によっては、遠慮なく、他人ののどを切ってしまう」。
 スペイン語で「ガウチョ」には英雄という意味も含まれ、アルゼンチンやウルグアイで男らしさの象徴だ。ホセ・エルナンデス(一八三四─九四)の「マルティン・フィエロ」が亜国で国民文学として広く読まれ続けているのをみても、存在感の大きさが分かる。
 たくましく、剛毅でありえた「ガウチョ」。その体力を支えたのは、マテ茶だろう。「飲むサラダ」とも言われ、牧童の活力源になってきた。
 鉄分、カルシウム、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル成分やポリフェノール類の一つであるフラボノイドを豊富に含有。鉄分は百グラム当たり約六十ミリグラムで、緑茶の四~五倍に達する。
 原産地はブラジル、アルゼンチン、パラグアイの国境近く。つまりパラナ川流域で、イグアスーの滝の辺りに自生している。モチノキ科の常緑樹。野生種は十二メートル以上に育つ。
 もともと、マンジョカを主食にしていたグァラニー族が不老長寿の薬として常用していた。先住民の教化のために渡ってきた宣教師が人工栽培に乗り出し、嗜好品として植民者たちに広がった。
 大土地所有制によるモノカルチャー経済や金銀財宝の探索。植民者は富を求めるばかりで、食生活が豊かだったとは思えない。マテ茶は植民者の栄養不足も、補ったのではないだろうか。
 ノーベル医学賞受賞者のウーサイ博士によると、(1)造血作用(2)血圧降下作用(3)美肌(4)肝肥大化防止(5)疲労回復(6)腎機能活性化──などの薬効があるという。マテ茶には病気の元を〃マッタ〃する力が、秘められているのかもしれない。

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