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パフィア・ブラジルの朝鮮人参

健康広場

2005年10月19日(水)

 憤まんやる方ないと言って、知人がこぼした。「日本の会社がこぞって、プレジデンテ・エピタシオに自生している人参を持ち去っているようです」。さらに地域住民が日系人に敵愾心を向ける恐れがあるのではないかと、たたみかけてきた。
 もう二、三年前のことだ。商標や特許をめぐって日系企業を告発するドキュメンタリーがたまにテレビで流れていたので、地元在住者でない彼も傍観者でいられなかったのだろう。
 地図で調べると、現場はプレジデンテ・プルデンテから九十五キロ。南マット・グロッソとサンパウロとの州境で、現地在住者や博研関係者などに聞いてみた。しかし、事実を確認できるような証言は得られなかった。あれ、ガセネタか──。
 ただ熱帯ブラジル原産のパフィア(ヒユ科)が、生えているということが確かめられた。根の部分が朝鮮人参に似ていることから、「アマゾン人参」「ブラジル人参」「南米人参」とも呼ばれるものだ。どうやら、これがくだんの物らしい。
 〃本家〃は亜熱帯の済州島を除き、朝鮮半島の全域(北緯三十四~四十三度)と中国満州地方(北緯四十三~四十七度)、ロシアの沿海州地方(北緯四十二・五~四十八度)で野生の山人参として自生していた。
 「百済新集方」によると、紀元前三世紀に成立した高句麗時代から既に人蔘の産地や使い方についての記述があったという。日本には七九三年に持ち込まれた。
 玄丞培氏(理学博士)によれば、(1)肝臓病(2)糖尿病(3)動脈硬化(4)高血圧(5)貧血(6)がん──などに効果がある。免疫機能を高めることから、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の抑止につながるのではないかとの期待もかかるという。
 一方パフィア(根の部分)は少なくとも三百年以上昔から、アマゾン先住民に不老長寿の薬として重宝がられてきた。(1)滋養強壮(2)媚薬(3)精神安定(4)慢性疲労(5)糖尿病(6)関節炎(7)がん──など使用目的は多岐にわたった。
 「媚薬」と「精神安定」というのは、どうも矛盾しているようにみえてならない。交感神経にも副交感神経にもプラスに作用するのだという。万能薬と言われる所以かもしれない。
 両薬草の主成分に共通するのは、サポニン配糖体。これが疲労・老化防止、がん予防、肝臓や胃腸の機能強化を促す。
 日本の研究所が八七年にブラジルニンジンから誘導したカルス(癒合組織)を培養し、サポニン、サポゲニン、β―エクダイソンを製造する特許を取得した。根から採取したほかの成分は、アメリカ企業に押さえられている。
 さらにパフィアに体内のコラーゲンをつくる重要な働きがあることがつきとめられ、日本の美容関係会社が特許を出願中だ。このような状況が知人の神経に触り、冒頭のような発言につながったのだろう。
 薬用植物の宝庫であるブラジル。まだ未発見の薬草があるかもしれない。ぼやぼやしていると、知らない間においしいところを外資系に持っていかれかねない。

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