健康広場
2005年11月2日(水)
アマゾンの異常乾燥で支流や分流を含めてソリモンス川やマデイラ川の水位が下がり、流域住民の食料・医薬品・燃料不足が懸念されている。ロタ・ウイルスの感染が広がりを見せており、アクレとアマゾナス州で八・九月に五歳以下の子供三十八人が下痢などの症状を訴えて死亡した。飲料水に困り、泥の混じった川の水などを飲んだため。州政府などは緊急に、点滴剤や抗生物質などを被災地に送ったという。ロタ・ウイルスによる胃腸炎症とはいかなるものなのだろうか。
■感染状況
保健省によると、八月からアクレ州二十二都市のうち二十市で、ロタ・ウイルスが原因とみられる急性の下痢が一万三千八百十五件確認され、リオ・ブランコやクルゼイロ・ド・スルなど計七市で未成年者二十九人が死亡した。先住民に犠牲者が目立った。
アマゾナス州での感染報告件数は、南部・南西・中央部など二十一都市で計四千六百四十六件。イピシューナで十二人が亡くなった。
アマゾナス州保健局保健衛生基金(FVS)のエヴァンドロ・メーロ所長は「市民はトイレのそばに蛇口をつくっており、飲料水としている川の水は糞尿の残りかすによって汚染されている」と警告を発している。
降雨不足で河川の水位が極端に下がったのが、ウイルス感染の大きな原因。プルス、ジュルア、ソリモンス、マデイラ川が特に、厳しい乾燥に見舞われている。三十七度を越す気温も、感染拡大を助長しているようだ。
一方、マナウスでは一月から八月までの感染件数が十五件だけだった。「同市民は既にウイルスに対して抵抗力を持っているため」(ベルナルディーノ・アウブケルケFVS技術部長)とみられている。
■ロタ・ウイルス
ロタ・ウイルスは、二十五年以上前から知られている。電子顕微鏡で観察すると、車輪(ラテン語でロタ)のような形をしていることから、この名が付いた。患者の糞尿から出たウイルスが手などによって運ばれ、周囲の人の口に入ることで感染する。
激しい下痢と嘔吐を起こすのが特徴。水のような多量の下痢便がでて便の色も白っぽくなることから、白色便性下痢とも言われる。抵抗力の弱い子供がかかりやすい。全世界で毎年六十万人が亡くなっている。
ウイルスのため、特効薬は存在しない。下痢止めは有効でなく、脱水症状を防ぐことが重要だ。電解質のバランスも崩れているので、イオン水などで電解質を補うことも求められる。
嘔吐で飲み物を口にできないときは点滴治療を行う。脱水状態が高度になると生命にかかわるため、下痢と嘔吐が同時に起こった場合は早めに受診すること。合併症がなければ、嘔吐は一~二日で、下痢は一週間くらいで治まる。
ロタ・ウイルスの感染を防ぐには、手を洗う習慣をつけることが欠かせない。(1)トイレの後(2)オムツを替えた後(3)調理・配膳・食事の前──には特に気を配ることが必要だ。
アマゾナス州は点滴剤、抗生物質などの医薬品のほか、使い捨てオムツ、綿、アルコールを被災地に送るなどして対処している。ただ、同地域の主な交通手段は船だ。水位が下がって航行不可能になり、孤島になっている地域もある。
そのため、一部の住民は行政機関の対応のまずさを指摘しているようだ。