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日系健食業界の攻防=連載(6)=食品分析センターを開設=狙いは対日輸出のコスト削減

健康広場

2005年11月2日(水)

 頭を抱えながら、プロポリス生産者が「原塊でもエキスでも成分分析を付けないと、もう取引先が受け付けてくれない。日本側は最近特に、粗悪品を警戒しているようなんです」ともらした。
 健康ブームの影響で、日本でプロポリスの需要は増すばかりだ。その結果粗悪品が混じって消費者の目が厳しくなり、ブラジル産品が疑われることもあるのだという。
 販売に当たって、日本でもブラジルでも成分分析は義務付けられていない。とはいえ、品質を保証し激戦の中を生き残っていくには、欠かせない要素になっている。「食品の安全を守るために、将来は法律で規定されるんじゃないか」。そんな噂すら、飛び交う。
 しかし精密な分析を行うために、自前で機材を揃えると投資額はばかにならないし、第三者に委託しても相当のコストがかかる。生産者にとって、悩みの種は尽きそうにない。
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 このような状況の中で、MNプロポリスグループ(モジ・ダス・クルーゼス、松田典仁社長)は二〇〇二年六月に約二億円を投資。本社工場とは別会社として食品分析センター(CETAL)を立ち上げた。
 社内製品の分析・開発業務のほか、外部から依頼される原料・半製品・製品、食品・飲料水などの規格成分、有害物質・微生物成分の分析を行い、一カ月に約五百件の注文が入る。
 日本の東京顕微鏡院(下村満子理事長)やサンパウロ大学アドルフォ・ルーツ研究所が技術指導。同センターの実力はブラジルで折り紙付きだ。日本での信頼も、勝ち得ているという。 
 松田社長は「グループ全体の売上げからすれば、食品分析センターはわずかなものですが、品質保証体制の構築に力を注いでいくべきだと考えている」と社是を強調。消費者の信頼獲得にかける姿勢を鮮明にした。
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 同社は八〇年代前半から、プロポリスの生産を始めている。農務省の正式な認可(SIF)を得たのは一九九二年で、どちらかといえば遅いほうだ。販売競争も激しさを増していたころだった。八八年には分析試験検査を開始しており、着実に地歩を固めていった。
 「仕事の目的が、社会のためになっているのか」。若手企業家の経営塾「盛和塾」の塾生である松田社長は、稲盛和夫塾長(京セラ名誉会長)の哲学に傾倒。銀行から多額の融資を受けながらも、食品分析センターの開設を決意した。市民の健康増進に一役買い、盛和塾の理想に適っていると考えたからだ。
 「投資した分はまだ、全部回収したわけではないんですが」と控え目に話すが、口ぶりには自負心も表れる。「お客様の安心と信頼を得ることができ、十分にペイしていると捉えています」。
 食品分析センター開設の反響は大きく、各方面からの視察が絶えない。政府の認可を現在申請中で、実現すれば日本の入管で食品検査を免除されることになる。商品を倉庫で待機させている間のコストを大幅に削減できるため、注文が伸びていく見通しだ。
 「食品分析センターの敷地には、十分に余裕があるので今後増築し、人材も増やしていく計画です」。松田社長の攻勢は、まだまだ止まらない。(つづく)

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