ホーム | アーカイブ | 日系健食業界の攻防=連載(9)=アガリクスの定義が争点=保健省案に生産者反発

日系健食業界の攻防=連載(9)=アガリクスの定義が争点=保健省案に生産者反発

健康広場

2005年12月28日(水)

 アガリクスは健康食品か、それとも医薬品か?  その位置付けをめぐって、関係者の間で議論が沸騰している。というのは、保健省が二〇〇四年十二月に発表した食品部門の衛生管理活動に関する法令案で、食用茸が規制対象に入れられたからだ。
 法案は健康を損なうリスクの評価・予防措置に焦点を当て、(1)国家保健監督庁が指定する食品の判別・品質基準の技術規定(2)生産プロセスの施行規則──などを盛り込んでいる。国民の健康を保護するのが目的。
 アガリクス(学名=アガリクス・プラゼイ)はマッシュルーム(同=アガリクス・ビズポルス)、椎茸(同=レンチヌラ・エドデス)とともに食用茸に分類されている。物議を醸しているのは茸類の定義だ。
 法案によれば、茸類は食用茸から得た製品で(1)脱水(2)生のまま(3)刻んだもの(4)乾燥・燻製された保存食品──を指し、砂糖、塩、香辛料、調味料の添加も許される。
 逆に、茸類から除外されるのは(1)粉末(2)液体(3)板状(4)カプセル(5)錠剤など。植物としての外見的な特徴を、失ってはならないことが強調されている。
     ◇◇◇
 この法令案に対して、ヤクルト商工の飯崎貞雄副社長は不満をぶつけた。「多くの人が誤解しているかもしれませんが、アガリクスは機能性食品で医薬品ではありません。容器・形状で、中身が変わるわけでもないでしょう」。
 もし法案が可決されて発効すれば、粉末・液状などの製品は医薬品とみなされ、薬事関係の管轄下に置かれる。つまり、食品とは別の手続きを踏まなければならない。
 飯崎副社長は「輸出に問題はないけど、国内販売がかなり狭まる。医薬品の扱いになれば、薬理効果に対するデータもかなり厳しいものになるはず」と危機感を募らす。
 健康食品店での販売は、薬局としての機能を持っていないため非合法になってしまう恐れもあるわけだ。
 サンパウロ市内の商店主は「政府の検査官がきて、指導を受けたことがあるんです。(粉末やエキスは)あまり表立って売れない」と証言。アガリクスを取り巻く、複雑で微妙な状況を明かす。
 オカモト・タカシさんが一九六五年に初めて、ピエダーデで栽培に成功したキノコであるアガリクス。生産者には、日系人が圧倒的に多い。
 ブラジル食品工業協会(Associacao Brasiliera das Industiras da Alimentacao、サンパウロ市ブリガデイロ・ファリア・リマ街)の理事でもある飯崎副社長の呼びかけで、日系を中心に十五社が結束。ABIAに専門委員会を設立して、保健省に法案の修正を促している。
 これまで生産者たちが情報交換を行う場がなかったという点で、委員会の存在意義は大きい。〇五年に数回会合を持った。
 「これまで、個々がデスパシャンテ(仲介業者)などを通して、政府との交渉に当たってきた。この法令案を機会に、みんなが力を合わせるという雰囲気も出てきたんじゃないか」(同副社長)。
 法案の〃着地点〃はまだまだ不透明だという。生産者の要望は政府に届くのか、熱い攻防は続きそうだ。     (つづく)

健康広場一覧  

Copyright 2005 Nikkey Shimbun

Leave a Reply