健康広場
2006年1月11日(水)
〇五年十月、アガリクス生産・加工業者に衝撃が走った。がんに効くと書籍で宣伝したなどとして、出版社の役員や健康食品販売会社の社長など計六人が、日本で薬事法違反(承認前の医薬品の広告、無許可販売)の疑いで逮捕されたのだ。
逮捕者が出るだろうと、その数カ月前から内部関係者の間でささやかれ、ブラジルにも情報が伝わっていた。事件は想像以上の深い爪跡を残した。
「知ってはいたんだけど、これほどの余波があるとは予想もつかなかった。問題の本も持っていますが、『末期がんの患者に効いた』など宣伝の仕方はあまりにも大げさ。アガリクスは薬ではありませんよ」。
サンパウロ市近郊の町に住む、生産者はやり場の無い怒りをぶつけた。
十年足らず前に生産設備を譲り受け、細々ではあるが、投資を行い、流行の健康食品をつくってきた。が事件のせいで、出荷がぴたりと止まった。イメージ・ダウンのために、注文が入らなくなったからだ。アガリクス一筋だった故に、壊滅的な被害を受けた。
「商売変えを模索しているところです。設備を買ってくれる人なんかいないから、そのまま放置の状態ですよ」。
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業者の声を総合してみると、事件前と事件後では売上が三割~四割下がった。八割~九割減の被害を受けたところも。
アガリクスの流行のピークは〇二~〇三年で、以後売上は右肩下がりの傾向を見せ始めていた。知名度のある業者を例にすると、年間に六十トン(乾燥茸)の出荷量を誇っていたのが、四十トンにまで落ち込んだ。
今回の事件がそこに〃追い討ち〃をかける形になり、日本では新聞・雑誌の広告欄から瞬く間にその名が消えていったという。
「もう盛り返すことはないでしょう。値段を安くしたからといって、日本人が買ってくれるわけではない。流行の恐さをまざまざと知らされた事件だった。〃一本足〃で立つのはやはり危ない。多種の商品を、開発していかなければ」(サンパウロ大都市圏の生産者)。
果たして、今後どんな展開を見せていくのだろうか? 淘汰が進んでいくのは間違いない。(1)プロポリスと混合した商品にする(2)ブラジル国内の販路拡大(3)日本以外の国への輸出──などが考えられそうだ。
連載九回目で説明した通り、国内では加工品に対して規制が強いから、(1)(3)の方向に進んでいくのではないかと思われる。実際に、台湾向けの販売に力を入れ始めた業者も現れ始めた。
前述の名の知れた業者は、米国のFDA(食品医薬品局)の販売許可を得て、同国への輸出を広げていきたい考え。
「厚生労働省(日本)の取り締まりが強化されている。米国のお墨付きがあれば、日本人のイメージも変わっていくのでは」と望みを託している。(つづく)