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日系健食品業界の攻防=連載(12)=成長産業も苦難の時期=突破口は商品開発

健康広場

2006年2月8日(水)

 モジ・ダス・クルーゼス市のMNプロポリスグループ(松田典仁社長)は昨年から、試験的に販売所を設けている。市場調査が主な目的だ。今年六月ごろまで実施して、消費者の意識・動向などを分析するという。 
 場所は市内から二キロ離れた、工場の前だ。営業日は土日などを除いた平日。現在のところ一日に約二十人、一カ月に約四百人といったあたりが、来店者数の大よそのペースだ。
 松田社長は「お客さんのほとんどが、自動車で買いにきます」と、これまでの実感を明かす。単純に考えて、客筋は中産階級以上だということだろうか。購買者に行っているアンケート調査も、それを裏付けする結果が出る見通しだ。
 若い国だと言われてきたブラジルも、高齢化が進行。市民は健康に目を向けるようになってきている。
 健康食品は成長産業の一つ。日系の健康食品関連会社による現地向けのプロポーションも活発化していくだろう。薬草が身近な存在であるだけに、健食は受け入れられやすい。
 ただ所得格差が大きいので、価格の設定が難しい。日系の小売店は「ブラジル人の方もきてくれます。今の店頭価格は、一般庶民には少し高いのでは」ともらす。
 ブラジル人が好んで購入するのは、主にビタミン剤。日本人のように、プロポリスやアガリクスにはあまり手を出さない。「医薬品と同じように、即効性を求めているのでしょうか」。
 プロポリスにしろ、アガリクスにしろ、効果を確かめるには、ある程度の時間が要求される。継続して購入できるだけの経済的な余裕が必要だ。国内市場で常連がついてくれるのかが、関係者の悩みだという。
 MNプロポリスの市場調査は、売り込み先のターゲットを絞るという点で大きな意味があるはずだ。
    ◇◇◇
 日系の健康食品関係者にとって、関心があるのはやはり日本の動向だろう。取引量が国内を上回っているからだ。
 先の回に、「薬品」から「健康食品」にイメージ・チェンジを図ることで、市場が拡大するという、日本側の観測を紹介した。しかしブラジルの生産者や小売店の間では、悲観的な見方が少なくない。
 ムラサン健康食品の村山正人さんは「昨年の後半から、販売が落ちてきている。今年も、この傾向が続くのではないか」と表情を曇らせた。
 アガリクスの宣伝で昨年逮捕者が出た結果、健康食品全体に対する信頼が大きく揺らいだのが響いたからだ。さらに、ドル安が輸出を不利な状況に追いやっている。
 日本から観光客が減少しているというのも影響しているらしい。カルナヴァルであるこの時期は、かき入れどきといえそうだ。旅行関係者は「はっきりした原因は分かりませんが、このところ観光客数が伸び悩んでいるのは事実ですよ」と話す。
 日本でもブラジルでも、健康志向が高まっているから、長期的にみて業界全体が発展していくのは間違いない。短期的には厳しい時期を迎え、今後淘汰が進んでいくのではないかとみられている。
 青息吐息の状態を打開していくためには、何が必要だろうか。キーワードの一つになりそうなのが商品開発だ。
 村山さんは「ブームというのは、波が激しいもの。景気が回復するには、業界を牽引していくようなヒット商品が現れてくることが必要なのではないか」と望んでいる。
 例えば、プロポリスのエキスでも、錠剤化やほかの薬草との混合など様々な展開が考えられてきた。これからも、新しいアイデアが求められているはずだ。
 MNプロポリスの松田社長は厳しい口調でこう語った。「業界が伸びていくのを、じっと待っているのではダメ。時代を先行したモノを生み出していかなければなりません」。           (おわり)

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