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鳥インフルエンザ=ブラジル上陸の恐れは?=連載(上)=アジアなどで91人が死亡

健康広場

2006年2月22日(水)

 高病原性インフルエンザ(鳥インフルエンザ)の感染がアジアから欧州に拡大している。人への感染はまれ。大量のウイルスが、体内に侵入した時に起こりうる。アジアでは死者も報告されている。世界各国が懸念しているのは、ウイルスの突然変異による人から人への感染。各国で治療薬タミフルの確保が急がれているようだ。ブラジルに鳥インフルエンザが上陸する危険は、距離的な理由などから低いとされる。しかし人から人への感染となると、観光客やアジア系移民によって病気が国内にもたらされる恐れがある。政府や民間団体は、水際での予防に取り組み始めているようだ。
 〇五年、ブラジルの鶏肉輸出額は三十五億八百五十五万ドルで、輸出量が二百八十四万五千九百四十六トンだった。前年比でそれぞれ三五%増、一五%増で、ともに過去最高を記録した。
 周知の通り、アジアで広がる鳥インフルエンザの影響が大きい。日本向けも好調。額が六億九千三百四十六万ドル、量が四十万四千七百九十六トンで、国別で初めて最大の輸出国になった。
 鳥インフルエンザが仮に国内に流入したらどうなるか? 鶏肉業界の損失は、おそらく計り知れない。国民の健康を守るのはもちろんだが、ブラジル政府が懸念しているのは経済的な打撃だろう。
 農牧公社のサイトによれば、昨年十月半ばから、各省庁の技術者や業界代表者らは、輸入鳥類の監視など感染阻止に向けた計画を実行に移す用意が整っているという。
 鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスの感染による鶏、あひる、うずら、七面鳥の病気。ウイルスが持っている病原性の強さ、他の病原体との混合感染、鶏舎内外の環境要因などによって症状の種類や程度は多様だ。
 鶏や七面鳥群では突然の死亡率の上昇があり、高い場合には百%に達する。主な臨床症状は(1)肉冠・肉垂のチアノーゼ(2)出血・壊死顔面の浮腫(3)脚部の皮下出血(4)産卵低下・停止(5)神経症状(6)下痢──などだ。
 人に移ると、(1)結膜炎(2)肺炎(3)多臓器不全──などの症状が表れている。二〇〇三年~〇六年二月十三日まで、WHO(世界保健機関)に報告された件数(人)はベトナム・インドネシア・タイなど七カ国で百六十九人。うち九十一人が死亡した。
 ブラジルに鳥インフルエンザが飛び火してくる恐れは、少ないというのが有力な見方だ。農業問題に詳しい、酒井孝雄さんは「えさの問題が大きい。北半球の渡り鳥が赤道を越えて、南半球までくる必要はないのでは」とみる。
 鶏舎を始め生産過程に関わる設備は、世界で屈指のレベルだ。鳥と人間との接触も、アジアほどに頻繁ではない。
 動物ウイルス学の専門家、リアナ・ブレンタードさんは「国内で鶏肉を購入しても、何の危険もありません。連邦査察システム(SIF)の技術者によって、きちんと分析されていますから」と、まず国民の理解を求めている。
       (つづく)

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