ホーム | アーカイブ | 成人病との合併が危険=生活習慣に根ざす痛風=「油断をすればすぐ発病」

成人病との合併が危険=生活習慣に根ざす痛風=「油断をすればすぐ発病」

健康広場

2006年4月5日(水)

 行動的で社会的に活躍している人に多い病気と言えば痛風だ。体内の尿酸値が上昇し、関節炎や腎臓の機能障害を起こすもの。中高年の男性に目立つと言われてきた。最近では低年齢化し、三十代で発病している。不適切な食生活や運動不足が、背景にあるようだ。動脈硬化や高血圧など生活習慣病を誘引する恐れがあるので、早期発見・早期治療が求められる。
 「足が痛い、痛い」。日系人企業家(60、二世)は三月末の朝、出社するや、体の不調を訴えた。親指の関節が大きく腫れており、文字通り風が吹いただけで激痛が走った。
 交通事故に以前遭い、針金のような器具を埋め込んで骨を支えている。何らかの支障を来たしているのではないかと不安になった。クリニカで診てもらったところ、「GOTA(痛風)」と診断された。
 職業柄、取引先との付き合いで外食することが多い。アルコールも大好き。主治医から「肉食ばかりで、野菜をあまり摂らない」と食生活の改善を促されたそうだ。
 医薬品を服用。翌日に取りあえず、痛みは引いた。「生活習慣には、日ごろから注意していなければなりませんねぇ」。
 援協診療所の矢島カルロス所長によれば、痛風は体内の尿酸(プリン体のひとつ)が飽和状態に達して結晶化し、関節の内面に沈着していくと発症する病気。心筋梗塞や脳血管障害など、成人病を合併する割合も高い。
 尿酸は老廃物をもとにして、一日に〇・六グラムがつくられ、尿とともに排出される。尿酸の産出が多くなったり、排泄が低下すると、尿酸は体内に蓄積し痛風が起きるわけだ。
 血液中の尿酸値は、男女とも7.0 mg/dlが標準。これ以上では異常になり、高尿酸血症と呼ばれる。女性は一般に低いので、痛風にかかりにくい。
 「患者のほとんどが男性。でも、更年期後の女性も注意する必要があります」(矢島所長)。
 尿酸値を押し上げる要因は(1)遺伝(2)食生活(3)飲酒(4)ストレス(5)医薬品の副作用──など。腎臓の機能障害も考えられる。
 高尿酸血症と診断された人が食べてはならない食品は、臓物(心臓、腎臓、肝臓)、子牛、若鶏の肉、ベーコン、ニシン、イワシ、タラなど。逆に牛乳、コーヒー、茶、麺類、穀物などは口にしてもよい。
 患者の半数以上は一回の食事の量が多い上に、食べる速度が速いと答えている。予防には肥満対策も欠かせない。
 一部のアルコール飲料は、尿酸のもとになるプリン体を含有。「痛風になりやすい人は、飲酒を控えたほうがよい」と、矢島所長は注意を促す。プリン体が最も多いのはビールで、ウイスキー、ブランデー、焼酎などの蒸留酒にはあまり入っていない。
 ウォ─キングなどの軽い有酸素運動は尿酸値を上げないので、予防には効果的だ。水分も積極的に摂取すれば、尿の排出も多くなり、尿酸が溜まりにくい。一日に二リットル以上を飲むのが理想的だという。
 痛風自体は医薬品の服用で治るものの、根本的な治療は生活習慣の見直し。矢島所長は「油断すれば、何度でも発病しますよ」と話している。

Leave a Reply