健康広場
2006年4月5日(水)
ABC地区(サンパウロ州)の工業都市が、長寿村に入るとは奇妙かもしれない。だが、サンカエターノ・ド・スル市は大都市圏にある〃島〃だ。
地方都市に居住しているように、市民は生活をしている。中心部でさえ、氏名を名前で呼ぶのはありふれたこと。薬剤師は患者を知り、子供たちは路上で遊ぶ。祖父母は隣家の戸をたたいて、おしゃべりを楽しむ。
平均年齢は七十八歳。サンカエターノに住む、高齢者の秘密は運動だ。二万人以上が市のスポーツ・センターに登録。年齢層は八〇%が六十五歳以上だ。
クラウジオ・バダリさん(74)は高血圧をコントロールするために、水中で運動。「体を動かすには、関節を使う。関節は少し、磨り減っているんだ。運動すれば気分がいいよ」とはっきりいう。
体育は予防医学の一環として、実施されているものだ。それぞれのセンターに老人科医、心理士、理学療法士、歯科医が交代で勤務。糖尿病や高血圧など高齢者に一般的な病気をコントロールしている。
内科医のパウロ・ピネイロさんは「彼らの気分が悪くなったり、病院に入院したりすることは少ない」と自信をのぞかせる。「センターに来れば私生活や子供・孫について会話。病気のことなんか忘れてしまいます」。
サンカエターノの高齢者向け事業は市長が変わっても継続されてきた、まれな公的政策。最初のセンターは十八年前に創設された。
一つのセンターのコーディネーター、パウロ・ダ・ローザさんは「当初、高齢者にはドミノやボチャ(ボーリングに似た屋外ゲーム)を楽しむスペースだけが必要だと考えられていた。時間とともに、高齢者自身から運動に対する需要が出てきた」と明かす。
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ミナス・ジェライス州アウフェナス市では、長寿の秘訣が足元にあるようだ。十五日に一度、市営中央広場がバイレのサロンに変化。市は色とりどりの絵の具で音楽堂を飾りつけ、DJとバンドが交替で演奏する。
アルコール飲料の代わりに出されるのは、茶とカフェー。それにポップコーン。男性はスーツ姿で現れ、女性は魅力的な服装の男性をダンスの相手に選ぶ。カップルに信仰、人種、社会的な階級は関係ない。ボレロ、タンゴ、フォローといった曲が、夕方から深夜にかけて流れる。
マリア・アパレシーダ・デ・ソウザさん(63、定年退職者)は、胸の脂肪でできた小結節を切除する手術を受けた。抜糸の日にバイレに出掛けた。「どんな薬よりも、これ(バイレ)が一番よく効くのよ」。
アウフェナスに住む高齢者の社会生活が精力的なものであることを、バイレは示している。活動への参加よって、高齢者の主要な問題の一つである「孤立」を解決させることが可能だ。
悲しみが少いほど、医薬品の服用も減少。愛情を交換すれば、日々の憂鬱からも解放される。
ジョゼ・ジョザキンさん(81)は言った。「ここの人々はカネを持って生活しているわけではないし、友人に囲まれているわけでもない。彼からは、私が必要としているものを与えてくれる。それは、世間話をすることだ」。