グルメクラブ
9月19日(金)
広島県在住の料理研究家、羽熊広太さん(二八)による中南米食文化紀行。サンパウロ市滞在中に聞いた談話と自身のホームページ(www.geocities.co.jp/Foodpia/9158/index.htm)をもとに構成した。第一回は先のパン・アメリカン大会の開催地、ドミニカ共和国。
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青い海、青い空。メレンゲやバチャータといったラテン音楽の発祥地で一日中音楽が流れている。比較的安全で、日本からの豪華客船も寄港する。
コロンブスが到着、黄金郷ジパングと勘違いした国だ。首都サントドミンゴはかつて「新大陸」最古で最大の都市だった。国民の八六パーセントが混血と黒人で占められる。
食でいえば、中米で一般的なトルティージャ(とうもろこしのピタパン)を用いた料理はあまり見られない。代わりに、魚と香味野菜のココナッツ煮や、タラの塩漬けトマト炒めが絶品だ。
原住民カリベ族の名残からユカ(キャッサバ系の芋)も主食材のひとつ。バナナとともに茹でサンコチャード(煮込みスープ)を作る。
鮮やかな色した花々が咲き乱れるせいか、色彩感覚がすばらしい。代表的料理コミーダ・バンデラはその名の示す通り、ドミニカの三色国旗をアビチュラ(黒豆のスープ)、ご飯、鶏肉の炒め煮で表現している。
珍しいのは生ハム。カリブ諸国で生産する国は恐らくここだけだろう。熟成の間の湿・温度管理が非常に難しいからだ。スペイン産に比べて少し硬く塩辛い感じがしたが、非常においしかった。
経済的困窮に苦しむビンセント諸島は捕鯨が許可されている数少ない場所。野菜、香辛料で炒め、ご飯に乗せて食すようだ。