グルメクラブ
9月19日(金)
今年も「ヴェイジャ」誌が料理分野別にサンパウロ市内の最優秀レストランを選考、その結果が九月十七日号で発表された。評論家らによる人気投票で勝者が決まるが、ブラジル料理「トレデシリャス」、日本料理「ジュン・サカモト」と、おおむね昨年通り。目立った変動はなかった。
そんな中、目を引いたのがイタリア料理。今年は「マッシモ」が一席に輝き、ここ数年、天下無敵を誇った「ファザーノ」の名が見当たらない。というのもアドッキ・ロボ街から移転計画が持ち上がり、休業していたせいだ。
その「ファザーノ」が今月、レストラン兼ホテルに生まれ変わってオープン。〝超〟が三つは付く高級仕立ての空間が大きな話題を呼んでいる。場所はヴィットーリオ・ファザーノ街。
話をレストランに限ればシェフはサルヴァトーレ・ロイ氏が引き続き務める。これまで以上にイタリア各地を精力的に歩き勉強してきたということで郷土色豊かな料理が楽しめそう。
旧館では古典様式と、現代的な感覚が同居した内装が人々をうならせたが、新館の壁(イペー製)を飾るのは二百年以上前の料理書―。クラシックかつモダンという斬新な空気がここにも生きている。
客席は以前の半分に減って九十席。二階には「ノンノ・ルゲッロ」がある。こちらはトラットリア(居酒屋、大衆料理屋)。
地階のバー「バレット」はアマウリ街からの移転。英国の雑誌「ウォール・ペーパー」によって「世界で最も素晴らしい二十のバー」のひとつに選ばれたのは記憶に新しい。
サンパウロ旧市街アントニオ・プラド広場で一九〇三年、イタリア移民だった現経営者の曾祖父がレストランを始めたのが「ファザーノ」の原点。百年が流れ、ファザーノ家はその故郷の国にもない究極のイタリア料理レストランを構えたことになる。