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食の話題=高級品志向のサンパウロ市民=グルメ市「ボア・メーザ」探訪

グルメクラブ

10月3日(金)

 最近の国産映画はノルデステ一色。サンパウロで流行する音楽、ダンス、ファッションなどにも東北地方の匂いが交じる。料理はどうだろう。カルアル名物ブッシャーダ(もつの煮込み)がブームだなんて話しは聞こえてこない。
 九月十八日から二十一日までの四日間、サンパウロ市のITMエスポで開かれていた国内最大規模のグルメ市「Boa Mesa」。延べ四万五千人が訪れた会場には百七十七もの食品業者のブースが軒を連ねたが、カルネ・セッカはついに発見出来なかった。「エウ・ケーロ・モコト!」などと叫ぼうものなら、嘲笑されていたはず。
 経済的中流層の増加を背景に、食への関心がにわかに高まりをみせている。といってもこの場合、関心の対象はもっぱら欧米の食文化にあるようだ。サッカーやサンバに興じ、フェイジョン、カルネを食べているだけの生活では満足のいかない層が確実に増えつつあるのだ。
 こうした状況に伴い、今年で九回目を迎えた同イベントも年々その規模を拡大している。出展業者の数は昨年度比で七%と数字のうえでは微増だが、中身のプチ・ブル化は顕著といっていい。 
 サンタカタリーナ産の生ガキ、ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシーグループのシャンパン、うさぎの肉、イタリア・トスカーナ産のオリーブオイル、オーストラリア、南アフリカなどいま注目の産地のワイン……
 事前に入手したプレスリリースには「国内各州の郷土食品も充実」とも強調されていた。いわく、シイタケやリングイッサ、ミナスの砂糖菓子など―。確かにありました。でも出展業者の資金不足か隅に追いやられて目立たない。燦々と輝く太陽(大手輸入業者)の陰に隠れた月のような印象は否めなかった。
 ただ、この海外志向のプチ・ブル化もマイナスばかりではない。輸入自由化後にみられた単なる外国製品ブームの時代が終焉し、消費者はより厳しい目で商品の選別に当たるようになった、と考えれば一応の「進歩」だ。
 食品だけでなく、会場各所で連日設けられた料理講座も華やかだった。ル・コルドンブルー(仏)、インスティツート・オブ・クリナリー(米)といった世界屈指のグルメ学校から現役講師が参加。ブラジル側もサンパウロの高級フランス・イタリア料理店のシェフらが特別にレシピを公開していた。フェイジョアーダのおいしい作り方の秘訣はどこも教えてくれなかった、のはいうまでもない。
 グルメ・ブーム熱は出版業界にも影響しているようで、DBAでは今後、六冊の料理関係本の立て続けに出版する予定という。また、サンパウロ市ジャルジンス区には昨年末、料理本だけを集めた書店もオープンしている。