グルメクラブ
10月31日(金)
退廃的ムードに包まれた十九世紀末、パリの芸術家たちが崇めたことで知られる酒アブサン。
ニガヨモギを原料とした高濃度のアルコールがその正体だが、含有するツヨシの人体への悪影響が指摘され、八十年前には各国で禁制品となった幻の酒だ。その色と飲後の作用から「緑の詩神」とも称された。
二、三年前だったか。ポルトガルからブラジルに類似品が輸入され、成分は似て非なるものながら、世間をにぎわせたのは記憶に新しいところだ。
もちろん幻だから追い求めたくなるのはひとの性だ。かつての芸術家が見た夢を共有したいという気持ちも分かる。
だが、ブラジルには代わりの品があった。カシャッサ。奇遇にも「ARTISTA」という一品に出会った。アブサンの味わいを評して曰く「妖精のささやき」とした作家がいたが、ここにもそんな味わいがある。
柔らかさ、洗練さ、そして強さ。名産地ミナス州サリナスのすべての特徴を備える、といわれる。この新鮮なときめき。十九世紀末のロマンがいまここによみがえりそうな気がする。
鷲のラベルが目印だ。