グルメクラブ
11月14日(金)
例えば、モルトウイスキーの最高峰と評されるマッカラン。その熟成に当たって用いられる樽はスペインのシェリー酒樽であることはつとに知られる。
他メーカーでは普通バーボン酒の空き樽を用いる。シェリー樽は値が張るためだ。対照的にマッカランは甘口シェリーのオロロソを二年寝かせた樽にこだわる。あの赤みの強い琥珀色、甘美な芳香はシェリーからの贈り物である。
色、風味、香り、輝き、渋み、底にたたえる深みや強さ―。カシャッサの個性だって熟成樽によってかなり左右される。最低二、三年は寝かされるわけだから、影響を及ぼさないわけはない。
一般にミナスではアンブラナ、サンパウロではジェキチーバ、リオではジャトバやイペーの樹木が樽に使用される。サンタカタリーナでは同海岸沿いの森林地帯に自生するアリリバ。
これから暑くなれば魚介類を食べたくなる。そんなときにはどことなく潮風を感じさせるサンタカタリーナのカシャッサを合わせたいと思う。今年は同地に日本人が漂着して二百年の節目。時宜も得ている。
サンタカタリーナ島にはかつて百以上の蒸留場があったそうだ。しかし今日に至ってはいくつも残っていない。ただ、その品質は他の生産地と比べても決して見劣りはしない。
とりわけ「ARMAZEM VIEIRA」がお薦めだ。二年物「SAFIRA」から十六年物「ONIX」まで熟成年別に六種類が揃う。いずれも上品な飲み口が特徴で二年物や四年物であれば冷やして飲む手もあろう。
いにしえのフロリアノポリスを描いた象牙色のラベルが洒落ている。その書体、ボトルの姿といいモルトウイスキーを彷彿とさせるものがある。
フロリアノポリス市を訪れた際は、アルド・アルブス街一五のバー・レストラン「ARMAZEM・VIEIRA」(電話00XX48・333・8476)に立ち寄ってみるのも一興。 同名のカシャッサはもちろん、海産物も味わえる。ピンクと緑に塗られたコロニアル様式の店は一八四〇年に建てられたものだ。
二百年前、この辺りを歩いた日本人がいたか、と偲ぶ一杯。ほかでは味わえない。