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魚屋さんの入れ知恵=テングニシの贅沢

グルメクラブ

1月23日(金)

  珍しい貝をリベルダーデの魚屋で見つけた。主人の三木宗三郎さんに聞けば、「テングニシ(天狗螺)」。ポ語では「Lingueta」と書かれあった。
 サンタ・カタリーナ州産。体長二十センチほどの一枚貝で、日本では房総以南の太平洋側に生息する。殻は染色され、祭りの夜店などで売られているそうだ。子どもが吹いて遊ぶ玩具にもなり、俗称「海ほうずき」の名で有名である。
 料理としてはまず、刺身・すし種に重用されている。甘味のある身は飲み干した後にうっすら旨みを残すのが特徴で、ゆでた後、薄切りし酢味噌でいただく方法もある。
 「鍋に貝を入れミリン、醤油を適量加えて炊く。そこにショウガ、ゴボウを刻んで食べても抜群だ」そうである。
 ただ、三木さんのところでも、一キロ十五レアルと決して安い代物でない。中国で「響蝶(ビョンロー)」と呼ばれ珍味扱いされるのも、このテングニシの類ではないか、と書かれているのをみた。作家の村上龍「料理小説集」には、「福臨門」(広東料理の世界的な名店)でこれを食べまくって散財する、とのくだりさえある。
 日本では三百種以上の貝類が何らかの形で食品に利用されているという。国内の養殖貝の生産高はホタテガイが圧倒的。マガキがそれに続き、この二種で食用貝の大半を占めている。