グルメクラブ
3月19日(金)
イカが出回り始めた。ブラジルではカーボ・フリオ沖でよく獲れるそうだ。
「暖・寒流が交わる、国内有数の漁港」とはリベルダーデの魚屋さん、三木宗三郎さんである。
毎年この季節、地元漁業組合主催の「イカ祭り」が開かれ観光客でにぎわいをみせるという。リゾット、フライ、クレープ、マリネ……とブラジル流イカ尽くしの料理が海岸の屋台に並ぶそうだ。
イカは和・洋・中、たいていの料理に生かせる。イタリア、ポルトガル、スペインの国々でも日常の食卓にしばし上る。しかしタコやイカを忌み嫌う西欧人の方がずっと多い。
その結果、世界の漁獲量の大半は日本人の胃袋に収まることに。タンパク質、ミネラル分に恵まれコレストロールを低下させるタウリンを豊富に含むのを知ってか知らずか、イカと日本人の付き合いは古い。
三木さんは「新鮮であればしょうが醤油で刺身(イカソーメン)だろうね」
酒の肴に最適である。八代亜紀は〈肴はあぶったイカでいい〉と歌った。
イカは捨てるところの少ない素材だ。スペインやイタリアではイカ墨を利用してパエリア、パスタなどの料理を作る。一方、日本には平安時代から塩、麹、酒に漬け込んで発酵させ「塩辛」にする伝統がある。
「塩辛」といわれるものにはカツオの塩辛(酒盗)、そしてウニの塩辛、アユの内臓の塩辛(うるか)などいろいろあるが、やはりイカの塩辛が一番なじみ深い。
ブラジル食続きの毎日に嫌気が差したとき、イカの塩辛で炊き立てのご飯をかきこむ。日本人であることの幸せをかみ締める。