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パブ『伯剌西爾』=シボキーニャ=フォホーを踊りながら

グルメクラブ

4月2日(金)

 理解しがたいネ。フフンだからどうしたって。
 知ってみたところで小言ひとつもいいたくなる「事実」というのがある。
 ある酒メーカーは宣伝でその「効果」を利用した。
 〈かたつむりの性交渉は生涯にただ一度しかないが、十二時間にも及ぶ〉
 〈ロッキングチェアーに座って揺られ続けた人のギネス記録はなんと四百四十時間って知ってました?〉
 〈どうでもいい「事実」ですね。反応にお困りの人もいることでしょう。でも「Xiboquinha」は違います。一度知ったらみんな納得、二言は不要。さぁ、飲んで試してみてよう〉
 などとひねった広告で語られる酒の正体はカシャッサと、砂糖、シナモン、クローブ、香草を混ぜつくったシロップ、そしてライム、蜂蜜を加えたカクテルである。
 その存在が全国区になったのは、九八年くらいからとまだ日は浅い。九六年、エスピリト・サント州のイタウナス海岸でついた火がサンパウロに飛び火し地方都市へと普及した。
 もっぱらダンス音楽フォホーと結びつく形で飲まれるが、それはイタウナス海岸がフォホーのパーティーで有名だったせいだ。サンパウロのピニェイロス、ヴィラ・マダレーナ辺りに集中するフォホーのディスコではもはや「定番中の定番」の酒である。
 会社の公式ホームページ(英語、仏語版もある)に掲載されている誕生秘話が興味深かった。
 一九五一年、サンパウロ州の田舎町イターポリスのレストランに働くドイツ人が「Schephken」という酒をつくり常連客に振る舞い絶賛されていた。しかしドイツ語の発音はブラジル人には難しい。そこでシェフォーケン、シボーケン、シボキー、「Xiboquinha」といつしか呼ばれるようになった。元々ドイツに一般的な姓名でありそのポルトガル語に深い意味はない。
 メーカーの現社長も同じレストランの従業員だった。あるとき病に倒れたドイツ人の世話をしたことから特別に酒のレシピを教わる。その後、長い長い紆余曲折を得て現社長は九〇年、サンパウロ州サン・マテウスにレストランを開業。秘伝の酒が大好評を博し二年後レストランを閉め酒造に専念し始める……。
 半世紀以上にもなる歴史をかいつまんでいえばこうなる。ドイツ移民がブラジルに伝えまず田舎から田舎に広まり、そして都会へ。いまでは国内のレストラン、バー、ディスコ合わせて八万軒に販売拠点を持つまでに成長した。英語、仏語はもちろん輸出用の商品ラベルには独語、西語の表記さえもある。
 〈キンキンに冷やして飲めばさらにおいしい。これぞブラジルの風味、杯を重ねるごとに愉快になってくる。いつでもどこでも〉
 〈もちろん、ロッキングチェアーに揺ら続けて四百四十時間というタイミングで飲んでも旨い〉とは恐れ入りました。