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俳句

ニッケイ俳壇 (856)=星野瞳 選

故・西谷博(南風)氏

【この九月四日世を去った西谷南風遺句集より】

仔馬追ふ母馬の眼の人に似る
時雨るるやキリストの本売ル人に
百雷の轟く滝の夕燕
吹き荒れて谷に落ちたる野分かな
火焔樹の下に人待つ恋乙女
鍬百姓四十年や豆の花 ...

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ニッケイ俳壇 (855)=富重久子 選

サンパウロ  平間 浩二

夢追ひしなべて移民の花珈琲
【今から百何年前に移民した人々は、戦後移民の我々とはちがって、珈琲栽培と言うしっかりとした目標があって、短期間の移民として来られたと聞いている。
 「なべて移民の」とこの句にあるように、珈琲を植えその実を収穫して売買してという、全ての人の胸に大きな夢があったのである。「花珈琲」という芳しい季語の真に良く坐った巻頭俳句であった】

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ニッケイ俳壇 (854)=星野瞳 選

アリアンサ 新津 稚鴎

枯野中庭をきれいに掃いて住む
一つ歩き皆歩き出す枯野牛
教会の扉につづくなり枯野径
遠野火をびっしり闇の閉ぢこめし
火の色の闇に滲まぬ遠き野火

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ニッケイ俳壇 (853)=富重久子 選

通勤・帰宅時間に主要道路は渋滞となり、なかなか車が動かないことも。サンパウロ市の中心部では、月曜日から金曜日には車両ナンバーによる時間帯規制も行われているが、それでも渋滞緩和とはならない。

勝ち負けの戦の炎敗戦忌
【八月十五日はわが国の敗戦の忌日であっ­た。既にブラジルに移民していた人も、日本で敗戦を味わった人々もそれぞれに其の日のことは忘れることが出来ない。
 この句にあるように「戦の炎」は勝利を叫んだ国も、敗戦の汚名をかせられた国もお互いに戦の辛酸を蒙ったのであった。敗戦という難しい季語をもって、よく省略の利いた佳句である。】

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ニッケイ俳壇 (852)=星野瞳 選

『ツクピー』とはマンジョッカ(キャッサバ)の根の絞り汁で、舌先や唇に痺れ感を感じさせる液のこと。この液で鶏肉や鴨を煮込むのがブラジルの先住民インディオの料理。

   アリアンサ         新津 稚鴎冬日負い軍平胸像顔暗し首ふって歩く他なき時雨牛犬の嗅ぐ物より翔ちし冬の蝶どびろくや転耕とどむ術もなく土深く想思樹の実を植えにけり   セーラドスクリスタイス   桶口玄海児妻掘りし里芋どれも肥えて居し移民妻にある大望や芋の秋移民妻長生き希望今年竹ここからは町の入り口イペ万朶キリストの泪 ...

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ニッケイ俳壇 (851)=富重久子選

   サンパウロ         田中美智子 果てしなきゴヤスの大地冬景色【旅吟について、「ブラジリアの建築群を見てゴヤス高原の中の幾つもある滝を巡る旅で、地下には豊かな水源があり、澄んだ水が流れていました。広いブラジルの多様な自然の一部を見る事の出来た旅でした」とあり、お手本の様な立派な旅吟であった】 冬街道広野を渡る風の旅冬 ...

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ニッケイ俳壇(850)=星野瞳 選

ブラジルでは季節が冬である時期に桜が満開となり、『桜まつり』などが開催される所もある。

   アリアンサ         新津 稚鴎 気まぐれな雨が降っては冴へ返る屈託もなき髙笑い夜なべ子等サンジョンの焚火にちらと見しは彼ダムの水深く映りて凍てし星確実に老化は進み秋も逝く【一九十五年生れの、確実に百才を迎えられた作者・稚鴎さんには、老化など露見られぬ。どうか私達を引っぱって居て下さいお願いします。ついて行きます。私 ...

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ニッケイ俳壇(849)=富重久子 選

フェジョン(豆)と肉を煮込んだ料理『フェイジョアーダ』は、ブラジルの代表的な料理。

   ボツポランガ        青木 駿浪 余情なほ夕べとなりし庭四温【冬季に三日寒い日が続き、その後暖かい日が四日あるのを三寒四温と言うが、最近のサンパウロでも今年はそのような冬の気候が続いている様に思う。 この句は四温の夕暮れ時、家の庭に立ちしんみりとした想いをこめて、なんとなく安らいでいる作者の姿であろう】 一病の妻を看 ...

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ニッケイ俳壇(848)=星野瞳 選

ブラジル日本人街があるリベルダーデ区の七夕まつりの様子。ブラジルでは、各地で日系団体が七夕祭りを開催している。

   セーラドスクリスタイス   桶口玄海児 アリアンサにて稚鴎老達者耳目達者よ朝涼し雷のあばれておりし大地かな新しき蟻塚濡れて奥地かな声涼し農園の子日本語    ジョインヴィーレ      筒井あつし 雲の峰冬にも立つやパラナ河冬晴れて鏡の如き水面あり冬ぬくし広場で始まる釣談議マンジョーカ引き抜く力失せて老う    サンパウロ ...

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ニッケイ俳壇(847)=富重久子 選

ブラジルでは『フェイラ』という朝市が曜日ごとに決まった場所で開かれ、朝早くから大勢の人で賑わう。新鮮な果物や野菜、肉、卵、日本人や日系人が多く暮らす地区では鮮魚も販売されている。

      サンパウロ      広田 ユキ 相似たる身の上話移住祭【我々日系人は六月十八日、サントス港に着いた日を記念して移住祭を催し、其の日は公式に「移民の日」とされている。 この句にあるように戦前戦後を問わず、共に移住後の暮らしは肉体的、精神的にも共にさまざまな苦労があったもので、「相似たる身の上話」と静かに聞き止めている ...

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