文芸
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小川武道館=サンパウロ 二宮春男
私は1946年頃、16歳から3年余、トマス・デ・リマ街にあった小川柔道柔術道場に通って稽古に励んだ。その頃ジアデマは『ヴィラ・コンセイソン』と言われた。その中心から二股に分かれた右側の道路(アスファ
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リオデジャネイロ五輪=マリンガ 園尾彬
最近の日本の報道を見ていると、リオ五輪を「リオでじゃねえよ」というような冗談で、ことさらに「開催危うし」また「リオは犯罪都市で危険」というニュースが多いように思われます。私のようにブラジルに帰化し、
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(35)
結果は、最初から解かっていた通り、万事休す。一時、お先き真っ暗に。これも自業自得の定めかと、サー、何とする。農家に支払うお金はゼロであり、品物の仕入れも完全にストップ。打つ手なしのこのままでは、帰る
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(34)
それでも早めにエコノミークラスの通路側に席を取り、寝た振りを始めた。千年君、どう見ても見られた者じゃないが、飛行機は定刻の一時半、滑るように走り出した。こうなると千年君、安心したのか、少し眠気を感じ
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(33)
そのうちパウリスタ新聞、サンパウロ新聞にチラホラと記事になり出すと思っていたら、今野氏が全伯民謡で優勝し、千年は日本民謡協会ブラジル支部の役員に。何が何んだか、わけが解からないうち、盛んに宮城県人会
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(32)
今野さんが「あそう、実は俺はバンコ(銀行)に少しばかり借りがある。これを明後日までに返えさないと、後の融資を受けられなくなる。三日で良いから貸してくれないか。必ず三日目には返す」と頼む。「ああ仕方な
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(31)
いつの間にか見知らぬ市場の先輩らしい人が、親しく声を掛けてきた。彼らが「そこらでコーヒでも飲みますか」と誘ってくれた。 彼に付いて行って、コーヒ店で色々と話してくれた。どうやら、この人は宮城県人の様
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(30)
先の古里の父の手紙には、「誰がお前の様な者を日本の親元まで訊ねて下さるか。この様なご厚意の方をけして無にするでない」と孫達の事まで得々と書いてあったのだ。 そして一九六七年一一月、カンピーナス一三〇
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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(29)
すると中から、二人の紳士が降りてきた。太郎は飛んでいき、二人に最敬礼をした。妻幸子が玄関のドアを開けながら、「貴方、はいってもらいなさい」と声掛けた。 太郎は二人を促して家に入った。「いやー、留守で
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