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文芸

「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(37)

「まあ、あまり驚かないでくれよ」 私が、「エル・パライーソ」で法外な料金と引き換えに得た情報を、要約しながら話している間、リカルドは、もくもくとシュラスコを食べながら黙って聞いていた。「で、現時点での私の推測だが・・・」 シュラスコで一杯になったリカルドの口の動きが止まった。「君が結婚したのは、きっと、アナと名乗っていたカロリー ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(36)

 かわいい笑顔とすらりと伸びた手足は、健康的で爽やかなイメージそのもの。この年頃の女の子は、こうじゃなくちゃいけない。この間、渋谷の街で見た、やけに短いスカートをはき、パンツを見せながら地べたに座っていた、不健康で退廃的なイメージの日本の女子高生たちとは大違いだ。 続いて、ガロータの両親に挨拶。初めて会っただけで、子供の教育とし ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(35)

「いやー、実にタイミングがいいよ。今、例の移住100周年の準備会合の会場にいるんだが、たまたま、お隣のパラナ州から来てる奴が、その有機農業協会とかいうとこの理事をしてるって言うんで、聞いてみたよ。木村さんのことは知ってた。それから、アナ・バロスという女。その協会の職員だったそうだ。今年の6月に辞めて、今、サンパウロにいるらしい。 ...

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創刊50周年記念『ブラジル日系文学』刊行

 『ブラジル日系文学』52号が刊行された。 創刊50周年にあたり、記念特集「ニッケイと文学 いったい何を書いてきたのだろうか」を組んだ。伊那宏さん、宮尾進さん、細川周平さん、醍醐麻沙夫さんなど15人が執筆。 その内、日系人として初めてブラジル出版界の最高峰「ジャブチ賞」を受賞した中里オスカルさんや、エスタード紙論説委員の保久原ジ ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(34)

 前の晩に巨額の投資をして入手した情報をきっかけに、私の頭の中で、サンパウロと群馬と新宿が、何となく一本の線でつながった。六本木とつながる線については、もうあの男に直接聞くしかないのかなと思った。 そんなことを考えているうちに、午後3時を過ぎ、今度は、リカルド田中がケータイにかけてきた。職場は休憩時間に入ったらしい。「こんにちは ...

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ニッケイ歌壇(509)=上妻博彦 選

      サンパウロ      梅崎 嘉明ジカ熱媒介の蚊の撲滅に医学薬学新プロジェクト吸血の蚊は雌のみと発見し雌雄の行動を遺伝子に組む遺伝子に組みかえし雄を培養し交尾で生れし幼虫は死すとかブラジルのジュアレス市で実験し画期的なる効果を得しと新しく開発されし誘虫の「ブラックホール」は家庭に必須やがてくるオリンピックの観戦に「ブラ ...

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ニッケイ俳壇(882)=星野瞳 選

   アリアンサ         新津 稚鴎アララ飛び花野の虹は濃かりけり向ふ岸鹿現れてこちら見る風鈴の尾の力抜け酷暑来る差し向けし灯に目を剥いて枝の木莬滝くぐり来て中空に囀れる【明治の偉人・正岡子規がそれまで日本にあった俳句や短歌を写生であるべきだと改革した。その俳句を佐藤念腹がブラジルに伝えひろめた。稚鴎さんはアリアンサで念 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(33)

 新聞を読みながら、一人ゆったりした気分でランチを楽しみ、デザートのティラミスを食べて、最後にエスプレッソコーヒーを味わっていると、午後1時を過ぎた。次は、あの男に「追加取材」だ。 木村屋コーヒーに電話すると、運よく社長は在席中で、すぐにつないでもらえた。「急にすみません・・・」「いえいえ、お気になさらず。どうされました」「実は ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(32)

 思い切って早起きして、『強制送還』というキーワードでネットサーフィンすると、入国管理局のホームページにたどり着いた。『法務省入国管理局では、“ルールを守って国際化”を合い言葉に出入国管理行政を通じて日本と世界を結び、人々の国際的な交流の円滑化を図るとともに、我が国にとって好ましくない外国人を強制的に国外に退去させることにより、 ...

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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(31)

「外人」のハンディがありながら、わざわざこの店まで来た甲斐があったと思った瞬間、カラスが持ってきた紙切れに手書きされた、内訳なしの請求額を見てぶったまげた。なんと、この時間のセット料金よりゼロが二つ多い。 やはり、最低料金で目いっぱい楽しむ「外人」は、遊びに関しては、日本人よりはるかに賢い。 賃貸マンションが生み出すあぶく銭をど ...

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