「両親は忙しかったですが、いつも僕を可愛がってくれました。店を閉めた後は、いつも三人一緒に夕食をとり、疲れていてもその日の出来事や相談事を聞いてくれました。日曜日の午後は、日本語を教えてくれたり、公園や遊園地に連れていったりしてくれました。家族三人が元気に楽しく過ごしていたあの頃が、本当に懐かしいです」「そうか。親が愛情を惜しま ...
続きを読む »文芸
私の2世観について=サンパウロ 平間浩二
2世観といっても時代的背景及び家族構成、生活環境等によって千差万別であると思う。時代の流れから大別すると、戦前と戦後に分けることができる。このように二分しても、戦前、戦後の2世の人間性、人格等については何ら変わることはない。あえて言うなら、戦後よりも戦前の方が日本的文化の素養を身に着けている人が多いように思える。 戦前の移住者 ...
続きを読む »憩の園=入居者の人生を書籍に=『黄昏乃稔り』発刊
老人ホーム「憩の園」の入居者23人の人生に焦点を当てた、日ポ両語の書籍『黄昏乃稔り 物語・写真・俳諧』が昨年12月に発刊された。日本での幼年期、移住の経緯、家族や仕事のこと、そして老後の人生などが綴られている。 著者は弁護士のゴンサロ・ルイスさん。学生時代に精神分析学を修めた経験から老人介護に長く関わり、これまでに聞いた日系人 ...
続きを読む »「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(5)
「何かの書類?」「ペドロという男の子の出生証明書のコピーです。サンパウロ市の公証役場が発行していますが、オリジナルはどこにあるか分かりません。この子は、3年前にサンパウロ市内の病院で生まれています。母親の欄には『Calorina Santos』という名前がタイプされていて、その下に母親自身のサインと身分証明書の番号が登録されてい ...
続きを読む »「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(4)
涙ぐむリカルドには申しわけないが、思い出したことを聞いてみた。「奥さんは麻薬が原因で死んだとか?」「信じられませんが、彼女自身が麻薬をもっていたらしくて、僕が東京にいる間に、警察は群馬の僕らのアパートを念入りに調べたらしいです。もちろん何も出てきませんでしたが・・・」 警察の取調べが一応終わった後、リカルドは在京のブラジル総領 ...
続きを読む »「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(3)
【第2話】 9月最後の日曜日、ある日系人が、事前のアポもなく事務所に現れた。 彼のように外国から出稼ぎに来ている連中の多くは、日曜日しか時間がとれないようだ。私は、毎日が日曜日のような生活をしているので、いつ客が来ても迷惑しないし、むしろ一人暮らしの寂しさを紛らわせてくれるので嬉しい。 短髪でまじめそうな顔をしたその男は、リカ ...
続きを読む »想い出を暖めて「オートバイの旅」=クリチーバ 田口さくお
息子とオートバイの旅に出た。行先はクリチーバ市から約2百キロ、グァラキサーバという港町。息子の友達夫婦との4人旅、グラショウザ街道を降り、アントニーナ市から砂利道を走ること約1時間。砂利道の本道から約10キロのところに『サルト・モラト』という滝がある。 ここは『グルッポ・ボチカリオ』という(化粧品の会社)財団が管理していて、滝 ...
続きを読む »ニッケイ俳壇(875)=富重久子 選
サンパウロ 串間いつえ読み尽す新聞二紙や寝正月【「寝正月」とは、忙しい年末の仕事も終 えて新年になり無精寝をすることであるが、ブラジル語ではそんな言葉も聞かないし、こちらは日本のような新年の手の込んだ正月料理をつくったり、新年の来客を迎えたりという事もあまり無く、堅苦しく無いので楽である。 この一句、普段は ...
続きを読む »「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(2)
私生活のほうは、素性の知れない私を理解し受け入れてくれた女性とめぐり会って結婚し、ようやく家族としての幸せを手に入れた。南米では、日本人移民(私)とヨーロッパ系移民(妻)の間にできた息子にも、自動的に生まれた国の国籍が与えられたため、両親と子供の国籍がばらばらになったが、移民社会である南米ではよくある話だ。息子はいじめにあうこ ...
続きを読む »「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(1)
【第1話 プロローグ】《ブラジル女性に薬の魔手》 警視庁によれば、9月4日・日曜日の深夜、東京・六本木の麻布警察署付近の路上で外国人女性がうつぶせに倒れているのを、通報を受けて駆けつけた救急隊員が発見した。着衣に目立った乱れはなく、外傷もなかったが、心肺機能が完全に停止していたため、その場で応急手当が施されたが、すでに手遅れで死 ...
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