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文芸

チエテ移住地の思い出=藤田 朝壽=(4)

 「寄生木」第一号は原稿用紙を二つ折にし華絵の美しいペン字の行書で出された。昭和二十一年の秋であったと記憶する。 左に覚えている歌だけ記す。  棉の芽は未だ幼し降る雨の激しくなれば気がかりて来ぬ        華絵  しめやかに雨降る夜半をちろちろと床下になくこおろぎの声        飯島 清  まぎらせどままにはならぬ玉突き ...

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チエテ移住地の思い出=藤田 朝壽=(3)

 小田切剣は筆名で本名は清水美貴雄、日大の法科卒で窪田空穂系の歌人で、最初バラ・ボニータ区に入植し間もなく移住地を去った歌人である。 戦後の一時期南米時事歌壇の選者であった。 小田切剣は戦前改造社が発行した「新万葉集」に四首、昭和五十四年講談社発行の「昭和万葉集」に三首収載された優れた歌人であった。 左に一首あて記す。    小 ...

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チエテ移住地の思い出=藤田 朝壽=(2)

 ここで負けてはいけない。と私は下腹に力を入れて「日本語の勉強のためにと考えた上、決心したのですから絶対に大丈夫です」と力強く言うと、「そう、日本語の勉強のためにと言われるのであったら考えなくてはねぇ」と華絵はしばらく思案していたが、「それでは私と二つのことが約束できますか」と問はれる。 二つの事とは?「一つはねぇ 一生短歌を持 ...

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チエテ移住地の思い出=藤田 朝壽=(1)

  (1)歌人志津野華絵と「寄生木」 戦前のチエテ移住地を代表とする歌人志津野華絵(本名 花恵)はチエテ十年史を見ると岐阜県出身で、昭和九(1934)年九月三日にチエテ移住地に入植している。 私は同年の十二月四日に入植したので、華絵より三ケ月遅かったことになる。 歌人華絵は昭和十二年頃から、当時発行されていたサンパウロ州新報の歌 ...

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ジャブチ賞作品が日語に=中長編小説『にほんじん』=武本文学賞作品集も同時出版

『武本文学賞受賞作品集』と『にほんじん』

 ブラジル日系文学会(武本憲二会長)からブラジル文学翻訳選集第3巻『にほんじん』(236頁)および、『武本文学賞受賞作品集』(440頁)が出版された。同会の『ブラジル日系文学』の刊行50周年記念事業。 『にほんじん』はパラナ州出身の日系三世、中里オスカルさんの作品。2012年に日系人として初めて、ブラジル出版界の最高峰「ジャブチ ...

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ニッケイ俳壇(871)=富重久子 選

サンパウロ  上村光代

畑よりブタンタンまで蛇はこぶ
夏野より光輝く朝日かな
せかせかと買ひ物をする師走かな

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平成二十七年度 芭蕉祭献詠俳句

<一般の部>【金子兜太選 入選】生き方に確信なきまま木の葉髪    吉田 夏絵【宇多喜代子選 入選】眠さうに満足さうに日向ぼこ     百合由美子【星野椿選 入選】残照の大アマゾンに寒夕焼      青木 駿浪【西村和子選 入選】さわやかな朝や口笛すき通る     佐藤あさ乃<テーマの部>【テーマ「木(樹)」 入選】アマゾンは樹 ...

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平成二十七年度 第20回「草枕」国際俳句大会

【有馬朗人選 入選】記念館の移民人形古日傘      坂上美代栄【今井千鶴子選 入選】移民らは梨も林檎も柿も植え     香山 和榮【岩岡中正選 入選】勿体無い勿体無いと生身魂     百合由美子【大久保白村選 入選】地獄見し此の世に生きて原爆忌   武田 知子【大久保白村選 佳作】難波ふく江【岸原清行選 入選】アマゾンは無窮の ...

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発気揚々=サンティアゴ在住 吉村維弘央

 今年(平成27年)の大相撲も終わった。 贔屓にしている白鵬が36回目の優勝を飾れず残念だったし、日馬富士、鶴竜に敗れた相撲は何となく後味の悪いものだった。 今場所(九州場所)で白鵬が栃煌山を相手した時に使った猫騙しという手は横綱が使う手では無いという批判も一部にはあるが、小生にとっては初めて見る相撲の手で、こんな手もあるという ...

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ニッケイ歌壇(503)=上妻博彦 選

サンパウロ  武田知子

家元ゆ新代表の派遣とて茶道の普及多岐にわたれば
伯栄庵せましとばかり参加せる和服はなやぐ絹ずれのして
お茶席に供する菓子も家元に学び帰伯のブラジル娘
宗旦忌偲ぶ茶会の進むうち懐石供す汗たりながら
茶懐石日本さながら今日一と日堪能せしと客笑顔にて

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