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文芸

ニッケイ俳壇(870)=星野瞳 選

カンポスドジョルドン  鈴木静林

房なりの青い木苺山の道
サワサワと桑食む蚕午前五時
蚕飼う家だけ残り寂れ村
蚕飼い国賊と云われ小屋焼かれ
登下校子供等仰ぐ青マンガ

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当地の名作、初の直訳に=「ぼくのオレンジの木」

作品の表紙(公式サイトより)

 当地の名作小説「メウ・ペ・デ・ラランジャ・リマ」の日本語訳『ぼくのオレンジの木』(ポプラ社、302頁)が発売されている。翻訳した永田翼さんと松本乃里子さんが来社、思いを語った。 同作は著者のジョゼ・マウロ・デ ヴァスコンセーロスの半自伝的な作品で、90年以上前のリオを舞台に、感受性に満ちた5歳の少年ゼゼーの成長を描く物語。68 ...

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『ブラジル日系文学』=第51号は小説・随筆特集

 『ブラジル日系文学』第51号(発行者=武本憲二、編集者=中田みちよ)が11月に発刊された。小説・随筆特集となっており、日語144頁、ポ語38頁もあり、内容的にも実に読みどころが多い。 中でも、文協美術展の特選を目指して熾火のように真っ赤な執念を燃やし続ける画家・野村達治を描いた小説『鎮魂の歌』(能美尾透)、13歳から13年間も ...

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パラグアイ=入植地調査よもやま話=坂本邦雄=(9)

 この少佐の兵科は、元は空軍ではなかったのが、例の1947年の大革命中、政府軍の偵察機の偵察兵として搭乗し任務に当っていたが、ある日パイロットが敵弾で即死した為に、急遽自分で飛行機を何とか操って無事着陸し助かったというエピソードで有名な軍人だった。 それが病み付きで兵科を替えて航空将校になった訳だが、チャコ地帯等の地理は自分の手 ...

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ニッケイ歌壇(502)=上妻博彦 選

アルトパラナ  白髭ちよ

幾日もの闘病生活空しくて友は一人黄泉への旅に
眠る如安らかな面(おも)の美しく並み居る人等に安堵与える
のうそん誌を繰り返し読み好みしと付き添いし人吾に語れり
のうそん誌を貸して上げたき人は逝き後幾冊も本棚に眠る
葬式を待つがに雨が降り来たり心にしみいる雨だれの音

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ニッケイ俳壇(869)=富重久子 選

サンパウロ  鈴木文子

大西日こもる熱気の窓を開け
【夏の西日は日中よりも我慢出来ない位の厳しさである。そんな西日から守るために日本では簾を下ろしたり、日除けを廻らせたり又、客を待って打ち水をしたりする。
 この句は大西日を受けて、熱気の篭った部屋の窓を、ようやく日の落ちたのを見計らって開け放っている一句である。「こもる熱気の」とよく省略の効いた的確な俳句であった】

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言論界にもっと活気を=サンパウロ 梅崎嘉明

 昨今は戦前移民はともかく、戦後移民の移住者もかなり老齢化して、2つの邦字新聞の購読者も年々減少しているようだ。淋しいことである。 だが、その反面、ある年齢に達した方々が、自叙伝とか歌集、句集といったものを時々出版されているようだ。書店に置いても売れる可能性も少ないので限定出版として友人間に配布されているようだが、受け取った方が ...

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ニッケイ俳壇(868)=星野瞳 選

リベイロンピーレス  中馬淳一

空揚げや塩味うまきマンジューバ
冷え切った西瓜の肌のしずくかな
切り西瓜両手にかざし客を呼ぶ
初夏の空飛びゆく飛機の点となり

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パラグアイ=入植地調査よもやま話=坂本邦雄=(8)

 この時ももしウインチが無かったら、どうしてそのような難所を渡れたかも解らなかったのである。かくしてペオンの案内で同地のある牧場の施設に辿り着き、主人は不在だったが、留守役のカパタス(管理人)の厄介になる次第となった。 その牧場の位置、主人公等の名は今ではとても思い出せないが、どうもグアイラ県の旧ファサルディ農牧林産業会社の領域 ...

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パラグアイ=入植地調査よもやま話=坂本邦雄=(7)

 そこで、私はなるべく静かに運転台に座り注意深くギヤをバックに入れ安全な場所へ戻そうとしたが、さすがの四輪駆動も空回りで全然ジープは動かない。 仕方がないので私はエンジンを切って、何か対策の方法はないかと降りようとしたところ、ズルズルとジープは独りでに小川の底にドシーンと滑り落ち、4輪を上にしてひっくり返った。 岸の上にいた田中 ...

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