文芸
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中島宏著『クリスト・レイ』第128話
君が変な外国人だと、僕が半ば冗談で言っているのは、その辺りの性格が普通にはあまり見られないものだからだよ。一見、明るそうに見えても、その裏面には結構、暗い部分が隠されているという感じかな。 それが
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中島宏著『クリスト・レイ』第127話
日本よりも、明らかにブラジルを向いて物事を考えるその性格は、本来の意味での移民という形からすれば、それが当然ともいえるものだが、しかし、実際にはなかなか、そこまで徹することができる人間は、一般の移民
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中島宏著『クリスト・レイ』第126話
もちろん、宗教に関していろいろな勉強はしてきたけど、それは私自身の為というか、個人的な興味本位での勉強だから、決して本格的なものではないの。 だから、もし本当に教会の仕事に徹するというのであれば、
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中島宏著『クリスト・レイ』第125話
「その両方かも知れないわね。特にこちらに来てしばらくは、その環境が日本とあまりに違い過ぎて、ちょっとしたショック状態だったわね。でも、そういうことは移民することの中に当然、含まれるものだし、これは私自
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中島宏著『クリスト・レイ』第124話
僕は、このブラジルという国から一度も外へ出たことがないから、そのことを本当に理解せよといわれても、ちょっと無理な話だけど、でも、そういう人たちを間近に見ていると、何かその辺りのことがおぼろげながら分
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中島宏著『クリスト・レイ』第123話
そりゃあ,外国人の多くが怠け者で、問題ばかりを起こすのだったら、考えなければならないでしょうけど、でも、現実は決してそうじゃないでしょう。ナショナリズムも分からないことはないけど、ブラジルのことを考
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中島宏著『クリスト・レイ』第122話
ただ、話すのがポルトガル語に変わったからといって、雰囲気が自由になるということではなかった。アヤのように、日本人であること自体が警戒の目で見られるという状況になりつつある今、以前のように、どこでもい
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中島宏著『クリスト・レイ』第121話
第二の人生を送るはずのこの国で、このような境遇に甘んじなければならないということが、移民して来た人々を堪らない気持ちにさせた。この責任は誰にあるのかと考えてみても詮無いことだが、それをいまさら、ブラ
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中島宏著『クリスト・レイ』第120話
その為、枢軸国の移民たちである、ブラジルにおけるドイツ人、イタリア人、日本人たちは、当然のことながら敵国人という目で見られ、集会、組織だった行動に対して制約の輪が一挙に狭められていった。外国語による
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中島宏著『クリスト・レイ』第119話
アヤにとって、そこには何の問題もなかった。ただ、移民としてこの国にやって来た一世の人々の間には、この変化に対してかなりの動揺があった。 ブラジル人社会との接触がほとんどなく、日本人同士で固まって、