サンパウロ 馬場 照子
面影の笑顔遺して桜散る
桜守りを黄泉へいざなう花吹雪
囀りの井戸端会議雄鳥とか
国花てふ誉れのイッペー黄金彩
ジャボチカバ木肌を埋める黒真珠
2015年10月16日 俳句
2015年10月14日 アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里
林田は何か猪瀬に耳打ちをしていた。猪瀬の目が眼鏡ごしにきらり光った。職業柄、この連中は鹿を追う漁師に似ている。「見せてくれ」というのである。宴の乱れた会場を抜け出した一行は、小楠の農場に向った。 納屋の一隅には、売れ残った二百キロのアーリョが茎をしばって吊るしてあった。技師はその中の一束をとって首を落とし、尻ひげを切り、薄皮を ...
続きを読む »2015年10月14日 読者寄稿
一生のうちで日常生活に支障無く送れる期間、即ち日本人の健康寿命は厚生労働省によると、2013年は男子が71・19歳(平均寿命80・4歳)女子が74・21歳(平均寿命は86・61歳)でした。即ち健康寿命と平均寿命とでは男性で9・02歳、女子で12・4歳の大差が有ります。 長寿は誰しも望むところでありますが、願わくば他人の足手まど ...
続きを読む »2015年10月14日 読者寄稿
最近、目良浩一氏の記事や講演がにぎにぎしく新聞に報じられていて、それに共感する人々も多いようだ。目良氏はアメリカに住んでおられるようで、アメリカの政情、歴史をネタに報じられておられるようで、日本側の情報を見聞きしてきた私などが読むと多少のくいちがいがある。 その国の歴史というものは、自分の国に都合のよいように記録されているもの ...
続きを読む »2015年10月10日 アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里
鹿さんはマキを補充しながら、「おいおい、先ほどのアーリョの話はどうなった」「ああ、あのかぜ薬か」大貫は無造作に言った。 牛はもう手放しにしてしまったし、用のないアーリョだから、「食べたらいい」と小楠の奥さんに差出した。それを使わずに小楠が植えたのである。その一キロのアーリョは、幅70センチ、長さ3メートルの畝に蒔いた。その年に ...
続きを読む »2015年10月9日 刊行
『のうそん』9月号が発行された。 随筆「唱歌に寄せる思い出」(渥美明)、短歌「夫逝きぬ」(西尾章子)、随筆「訪日を前に」(佐瀬妙子)、随筆「晩年」(国吉真一)、俳句「のうそん俳壇」(樋口玄海児)、小説「本多農場」(加藤武雄)、小説「蛍光・市井の一人の女性の手記より」(田口作夫)ほか。 問い合わせは日伯農村文化振興会(11・24 ...
続きを読む »2015年10月9日 アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里
牛にはそれぞれ、日本名ブラジル名を太郎、花子、テレザ、タチアナ、というように命名していた。太郎は日ごろボテコまで800メートルの道程を、出荷用の乳缶を載せて運ぶのに訓練していたので、カロッサは嫌がらずにつけさせていた。 でも、この日の太郎はちがっていた。 山道に入って二キロも歩かないうちに座りこんでしまった。いくら鞭でたたいて ...
続きを読む »2015年10月8日 アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里
だが季節外れの降霜のため、せっかく生育のよい小麦も、毎年穂孕期に被害を蒙り、入植者は断念してミーリョを植えたり、近くのパルプ工場に働きに行ったりして、土地を手離す者が増えていた。 小楠の隣耕地も、ジャポネースで、いい買い手があれば世話をしてくれとたのまれていたのである。「俺が話をつけてやる。牛を連れてはいって見ろ、そのうちに土 ...
続きを読む »2015年10月8日 俳句
サンパウロ 林 とみ代
心の灯一つ点して春の宵
【「春の宵」といえば日が暮れて間もない、どことなく和やかな明るさの残る感じ。淡い感傷の漂うような若々しい想いのあるものである。
この句の「心の灯」を点して、という詠み出しから心惹かれた一句である。春宵の明りの中に座りながら、ふと心の中に浮かんだ灯をやさしく点して、過ぎ去った若かりし頃の忘れられない想いを心に描く作者の姿であろうか】
2015年10月7日 アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里
それがカロッサに積む時、毎朝乳缶の蓋をとってみると、どの缶も必ずといってよいほど乳が盗まれている。乳はひと晩置くうちに。上面に黄色い膜を張るものである。その乳の固まりを集めて煮つめると手製のマンテーガができる。それが盗まれるのだ。どうせその分は出荷しないものの、乳も二、三リットルは減っているようだ。毎日ともなれば、小さなコソド ...
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