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文芸

日本とチリ、海を通じる結びつき(1)=チリ・サンティアゴ在住 吉村維弘央(いくお)

 第65期海上自衛隊幹部候補生過程終了、約170名を乗せた練習艦隊が北、中、南米12ケ国16港を160日掛け航海距離数5万4千kmの旅をするべく、さる5月21日、日本を出港した。 今回の練習艦隊の旅は1957年海上自衛隊練習艦艇部隊として練習隊群が編成されてから第59回目に当たるらしいし、今回は訪問国の数も多く、艦隊も練習艦「か ...

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(18)

 これは彼のひねくれた妄想ではないのを、不具でうまれたつぎの児が、太一夫婦の将来を暗示してくれた。その児は臍の緒がしまっていなかった。乳を吸う力もない虚弱児であった。太一もこれはとても育たないと望みをたったが。そこは親の情として、一度は医者に診せたかった。 ところが、ーお前でも自分の子は可愛いいがーと父からやられた時は、太一の息 ...

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『蜂鳥』

 句集『蜂鳥』第24巻第325号が刊行された。 「蜂鳥集」より3句、「雨季明けやパンタナールの崩れ道」(酒井祥造)「秋の駅ふり向けばまだ手を振りて」(金子一路)「タピオカを初めて食べし冬の宵」(中馬和子)、旅吟「佞武多祭」(平間浩二)、「風見鶏」(橋鏡子)、エッセイ「坂の下の白イッペー」(大槻京子)ほか。

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(17)

 千恵は夫の手をとって、自分の腹にあてがった。そこでは一つの命が育とうという意思で、母の胎内でおどっていた。太一はつい感傷的になって泣けてきた。泣けてしかたがなかった。これで夫婦の仲はおさまったようであったが。千恵は一生この傷痕を石のように胸のなかに持ちつづけたようで、夜の床でももう前のような身をなげだしてくるような情熱はみせな ...

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ニッケイ歌壇 (494)=上妻博彦 選

『カリンニョ』はポルトガル語で『カート』のこと。ブラジルでは、朝市やスーパーへこのようなカートを引いていくのが一般的である。

      サンパウロ      相部 聖花 過去は今過去になりたり未来世は未だ来たらず今を生きるのみ夫の沸かすコーヒーの香の二階まで立ちのぼり来て今日が始まるやわらかき冬日を浴びてくれないのつつじ咲きつぎ庭は明かるむ三か月咲き通したるシンビジウム色おとろえず鉢の縁に立つ今期三度開花を仰ぐイッペーも天候異変に迷いいるらし   「 ...

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ニッケイ俳壇(850)=星野瞳 選

ブラジルでは季節が冬である時期に桜が満開となり、『桜まつり』などが開催される所もある。

   アリアンサ         新津 稚鴎 気まぐれな雨が降っては冴へ返る屈託もなき髙笑い夜なべ子等サンジョンの焚火にちらと見しは彼ダムの水深く映りて凍てし星確実に老化は進み秋も逝く【一九十五年生れの、確実に百才を迎えられた作者・稚鴎さんには、老化など露見られぬ。どうか私達を引っぱって居て下さいお願いします。ついて行きます。私 ...

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(16)

 それも初夜がうまくすごせたからであった。床にはいると千恵のほうより積極にでてきて、太一の手をとって自分の乳房にあてがい、ー可愛がってねーと甘えた。太一はなんの不安もなく官能の喜びをあじわった。ひとりの娘を女にした満足と、こころよい疲労でぐっすりと眠った。 朝の光がそまつな借地農家の椰子樹の壁のすきまから、いく条もの縞になってさ ...

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(15)

 愛なき者の婚姻の悲劇であった。それにひきかえ友人は、神によって結ばれた緑は、人為によっては離せないという堅い信念よりきているように思えた。万事ことにあたって静かなること林のごとしという心境に太一は打たれた。 これは追憶もかすむほどの遠い過去になるが、はなは自分の選択した道をえらんだのだし、太一も自分の当為をなしただけであった。 ...

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(14)

 これで自分らの縁はおわりだと思うと、足もとに亀裂がはしり深淵に転落してゆく気持ちになった。 ところが、それは太一の思い違いで、彼は女性には月経のあるのもしらなかったが、はなもそのことは言わなかった。このように為すことすべてがちぐはぐな夫婦であった。いく日かたって女のほうから、男の手をもとめてきたので、太一は嬉しくなり不安がうす ...

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思い出=リベイロン・プレット 大河政義

ブラジル丸同船者会

 1960年3月13日サントス着の『ブラジル丸』で移住してきた人達が、去る3月13日金曜日にサンパウロの群馬県人会に集い、午前10時から午後3時まで、55年間の歩みを回顧しながら大いに食べ飲みしながら楽しいひと時を過した。今度の集まりにも、コチア青年移民の人達が6名と多く、奥様同伴で出席して下さった人もあった。  『ぶらじる丸』 ...

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