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文芸

ガウショ物語=(46)=ファラッポスの決闘=《終》=とどめを刺すなら今だ!

 歩いていくと、遥か向うから川岸を降りてくる人影が見え、わしの後ろの方からは別の、もう一人がやって来るのに気がついた。 ゆっくりと、まるで気楽な散歩をしているみたいに、ふたりは近づいてきた。 ああ、言い忘れていたが、二頭の腹帯の下には、それぞれ剣が差してあった。 気をつけて見ると二本の剣はそっくり同じだった。鍔は握った手にかぶさ ...

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ガウショ物語=(45)=ファラッポスの決闘=《2》=多くの血が流されたことか

 荷車の一団は広場の真ん中に止まった。ただちに案内役の男が進み出て、通行証やその他の書類を差し出した。男が言うには、やってきたのはある未亡人で、政府に宛てた書簡を持参した。捕らえられて家畜にされた牛や馬について、そしてその損害云々、といった内容の訴えが、延々と、もつれた縄よろしく書かれていたそうだ…… この出来事は、たちまちわし ...

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『ピンドラーマ』 7月号

 コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』7月号が発刊された。 「移民の肖像」、サッカーコラム「いよいよ準決勝突入!! コパリベルタドーレス」「各国移民レポート・アイルランド篇」に「ポルトガル語ワンポイントレッスン」など。グルメ情報やJCBカード優待クーポン、毎月のコーナーも掲載。 日系書店、日本食店などで配布している。問 ...

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PwC社「法律用語集」発行=希望者に無料配布中

 プライスウォーターハウスクーパーズ社(PwC、本社ロンドン)が、進出企業や学生向けに日ポ対訳の『法律用語集』を刊行した。ブラジル日本商工会議所の後援。 5千語に及ぶ、ありとあらゆる法律用語をポ語から索引できる。日本進出企業の要望を受け作成にいたった。PwC社の日系企業専門スタッフが語句を選定し、二宮正人弁護士事務所が邦訳、監修 ...

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『光源都市』 (七)

 コロニア最古の短歌会「サンパウロ短歌会」が歌集『光源都市』を発行した。月例会250回を記念した第一巻の発行より、50回ごとに発行されている。今回は第七巻で550回までの作品が収録された。 寄稿者数は前回の発行(2011年)の32人に比べ、今回は23人と年々減少している。編集委員会の梅崎嘉明さんは「序に代えて」で「この度が最後の ...

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(9)

 檀家でもない松山家の葬儀をとりおこなってくれたのに好感をもった。ー朝夕のお勤めを欠かさないようにーそういって坊さんは白木の位牌をおいていった。表には戒名が記してあり、裏には故人の生年月日と俗名が書いてある。太一はそれを机のうえの棚においたが坊さんに言われた祭事はおこなってはいない、位牌は千恵ではないし拝む気持ちになれない、千恵 ...

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ニッケイ歌壇 (493)=上妻博彦 選

ブラジル・サンパウロにあるブラジル日本文化福祉協会で、毎年2回「古本市」が行われる。ブラジルでは日本語の本は値段が高く流通量も少ないため貴重で、古い本でも大事にされ、この古本市の時には大勢の人が日本語の本を買い求めにくる。

      サント・アンドレー  宮城あきら この年も古本市に通いきて安き良き書を求め楽しむ古りし書の輝く文字懐かしき『啄木全集』買いて帰るも手に取ればたった二ヘアイスの哲学書済まないような握り出しの心地開き見れば南樹の署名滲み古りて時の移りを痛く思いきコロニアの知性ざわめく古本市秋は卯月の風物の詩(うた)   「評」まさしく風 ...

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ニッケイ俳壇(848)=星野瞳 選

ブラジル日本人街があるリベルダーデ区の七夕まつりの様子。ブラジルでは、各地で日系団体が七夕祭りを開催している。

   セーラドスクリスタイス   桶口玄海児 アリアンサにて稚鴎老達者耳目達者よ朝涼し雷のあばれておりし大地かな新しき蟻塚濡れて奥地かな声涼し農園の子日本語    ジョインヴィーレ      筒井あつし 雲の峰冬にも立つやパラナ河冬晴れて鏡の如き水面あり冬ぬくし広場で始まる釣談議マンジョーカ引き抜く力失せて老う    サンパウロ ...

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『楽書倶楽部』 28号

 随筆集『楽書倶楽部』第28号が発表された。 「奴隷と移民 ①」(梅崎嘉明)「忘れ得ぬひと」(中川恵子)「すばらしき妹の家族」(蓼沼弘美)「十三日間のツンボ」(小坂正光)など43作品に加え、特集「5周年記念親睦会に参加して」「サラリーマン川柳」「一口雑学」などを掲載。 問い合わせは日毎叢書企画出版(11・3209・4954)まで ...

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宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(8)

 寝台の頭をおく側に枕が二つならんでいる。わずか三日まえまで千恵が頭をおいたところなのに、今夜はもうその者はいない、いままでにも太一はおおくの人の死に会ってきた。ーすべての人間は死ぬ、知人Aは人間であった。それでAは死んだ。で片付けてきたが、千恵の死はその帰納法では納得できないなにかがあった。 太一は重い頭で、千恵との過去のさま ...

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