ホーム | 文芸 (ページ 142)

文芸

ガウショ物語=(43)=骨投げ賭博=《2》=刃物一つで二つの心臓貫く

 「月毛と?」 「月毛とラリカだ!その通りさ。やつにはもう飽きあきしているところだ!……」 「なら、受けて立つ。」 見物人の中には目と目を交わし、ささやきあう者もいた。彼等にはこのガウショが運に見放されていることが分かっていた。すでにかね金も馬も革の長靴も、銀の太い鎖がついた平ムチまで、全てを失っていたのだ。そして、今度は、相手 ...

続きを読む »

親睦観光リオの旅=イビウーナ 瀬尾正弘

 標記は、コチア青年連絡協議会主催の旅行であった。ことに今年はコチア青年移住60周年記念の年なので、行事の一つでもある。私も妻と共に参加した。世話役担当は第一次第一回移住の黒木けい氏で、彼の熱心で丁寧な呼びかけに応じ、募集を始めて一週間後にはほぼ満席となった。 バスは大型44人乗り。旅程は2泊4日で、先ずノーヴァ・フリブルゴ在住 ...

続きを読む »

螢の光=サンパウロ 相部聖花

 『螢の光』は学校の卒業式に歌い、涙を流して学校と学友との別れを惜しんだ歌、または紅白歌合戦のあと歌われ、過ぎし一年を顧みて互いに別れを惜しむ歌として私の頭の中にあった。 最近、ある歌人の文を読んだ。 「NHK紅白歌合戦の最後に歌われる『螢の光』は、もともとアメリカやイギリスなどで大晦日のカウントダウンに歌われるスコットランド民 ...

続きを読む »

宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(2)

 ついの旅になった訪日から帰った母をみて、息子はーママエは背中がかがんできたーとー彼の気づいたことを太一につげたが、それから千恵はしだいに痩せるようになった。医者にかかると、糖尿病と診察されて、こまかい食療法を指示された。処方どおりに従っているのに、干恵の体重は秤にかかるごとに針はさがっていった。息子は憂慮してふたたび病院で診察 ...

続きを読む »

ガウショ物語=(42)=骨投げ賭博=《1》=死者まで出す賭けとは

 「実をいうと、わしは自分の女を骨投げの賭博に賭けるのを見たことがある。その事で死者まで出たのさ……全くすごい賭けだった!」 街道に沿った村のはずれ、数本のイチジク の老木が枝を広げて陰を作っていた。その木陰にアハニョンと言うちっぽけな居酒屋があった。つぶれかかった店だが主人は抜け目のないヤツで、わしの見るところ脱走兵らしく、ス ...

続きを読む »

ニッケイ歌壇 (492)=上妻博彦 選

『ガリンペイロ』とは、ポルトガル語で金などの鉱採掘人、発掘人のこと。 (藤巻修允著『ダイヤの夢』より)

      サンパウロ      武地 志津 強風に煽られ落ちて傷みたる小鉢の仙人掌生気が失せる色褪せし蟹仙人掌を朝に夕に透かし眺めつ一縷の望みちんまりと蟹仙人掌の枝(え)の先に今朝みつけたり四つの蕾ほんのりと色滲ませつ膨らみし蕾は開くオレンジ色に垂れ下る枝(え)の先に花もたげ咲く蟹仙人掌の花びらやさし   「評」あの激しい土俵 ...

続きを読む »

ニッケイ俳壇(846)=星野瞳 選

焚火祭はフェスタ・ジュニーナ(6月祭)のことで、田舎風に装った若い人たちが集まり、大きな焚き火を囲み、大鍋でピンガに香料や砂糖を入れて煮るケントンを呑み、歌い踊ったりする。

   アリアンサ         新津 稚鴎 迷い入れし冥土の如く寒夕焼枯れるもの枯れ麻州野は夕焼けて風止みしこの静けさも夜の秋珈琲園耳の短い兎住む鋤焼きの最後は餅を入れて食ふ【一九一五年十月三日生れで、この十月で百才になられる。一字も正しく書いて下さる。字がまともに書けなくなりましたがとは云われるが。大麻州の寒夕焼が目に浮ぶ様 ...

続きを読む »

宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(1)

 もう一つの連れはどうしたきりぎりす一茶  妻の千恵に先立たれた太一は、命あるものが避けることのできない生死の離別は、世の中の常と理解していても、この度の事はなかなか心底から納得することができず、―女房はおれより五歳も下だから、あれが残るだろう―と、楽天的な気持ちと安楽な日々になれて、当分はこの現状がつづくものと安心していたのが ...

続きを読む »

ガウショ物語=(41)=密輸に生きた男=《3》=無抵抗の頭領に一斉射撃

 その悪事の先頭にいたのがジャンゴ・ジョルジだった。若いときからだ、その死に至るまでな。わしはずっと見てきたんだ。 さっき話したように、婚礼の前日、ジャンゴ・ジョルジは娘の嫁入り衣装を取りに出かけて行った。 昼が過ぎ、夜が過ぎた。 次の日、つまり、婚礼の日、昼が過ぎても何の音沙汰もなかった。 家には大勢の招待客が集まっていた。村 ...

続きを読む »

ガウショ物語=(40)=密輸に生きた男=《2》=警官一握り、国境開けっ広げ

 ここリオ・グランデ・ド・スールを支配していたのは陸軍大将と呼ばれる男で、開拓地は与えたが、その後の生活は何も保障しなかった……。 お前さん、それがどう言うことか、今度中尉のポストについたら、身を持っていろいろと体験するから解るようになるだろう。 あのころ、火薬はわれらの国王陛下のもので、許可を得た何人かの大物ガウショだけしか火 ...

続きを読む »