文芸
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ニッケイ俳壇(844)=星野瞳 選
アリアンサ 新津 稚鴎 秋深し味噌つけて焼くにぎり飯サボテンの実を紅くして露寒し地ひびきのして秋の雷鳴り渡る立ちのぼる焚火煙りに散る木の葉朝寒しねじり鉢巻して無職【最近の『俳誌・
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ニッケイ歌壇 (491)=上妻博彦 選
サンパウロ 梅崎 嘉明 高千穂に八紘一宇の塔たつと聞きし日ありきいまはまぼろし軍籍は持てど戦爭を知らぬ父日本は敗けぬと言いつつ逝けり大本営のラジオを聴きし友人は馳せきて日本の大勝
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ニッケイ俳壇(843)=富重久子 選
プ・プルデンテ 小松 八景 移民の日語り伝へて次世代へ【六月十八日はいみじくも「移民の日」である。戦後移民の私共には、その苦労の真相は新聞や書籍、或いはその方々から聞かされる実話に
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パナマを越えて=本間剛夫=106
彼らはボリビアで選ばれた青年六百五十人のレインジャーの緊急訓練を始めていた。この青年たちは十九週間訓練され、小銃や迫撃砲の撃ち方、装備のカモフラージュ、目標の位置の確認法、夜間移動者の足音、その他の
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パナマを越えて=本間剛夫=105
「読むわよ。わたしラパスの小学校出たんですもの」女は白い歯を見せて微笑んだ。 それから小一時間も話が弾んだ。ゲリラと軍の活動状況が聞き出せると考えたゲバラ一行はパンを頬ばり、カフェを呑みながらサンタク
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パナマを越えて=本間剛夫=104
すかさずゲバラは隙間から続けざまに拳銃を発射した。手ごたえがあって一人が「おおっ!」と叫んで前こごみに倒れ、一人はびっこをひきながら走り、乗ってきたジープに跳び乗って走り去った。ジープにもう一人の影
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ガウショ物語=(35)=赤いスイカと青いヤシの実=《3》=丘陵の高みに敵軍の一隊
馬具をつけるのを待つ間ももどかしく、伝令は馬に飛び乗ると駆け去った。脇目もふらずまっしぐらに目的地をめざした。 野営地に到着して携えてきた書簡を届けると、さっそく旧知の若者、つまりコスチーニャを捜し
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ガウショ物語=(34)=赤いスイカと青いヤシの実=《2》=娘と若者の秘密の取り決め
「お前さん笑っているが、下らないことだと思っているんだろう?……まあ、あの時代、あんたはまだ生まれてなかったからな……リオ・デ・ジャネイロの宮廷が独立宣言した時……、それから、ファラッポス戦争が起こ
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ガウショ物語=(33)=赤いスイカと青いヤシの実=《1》=刺繍のシーツと腰抜け野郎
「お前さん、まあ、ちょっと止まりなさい。馬具をしっかり締めなおさなきゃ、腹帯が後ろの方にズレちまっているぞ。それから、わしがあそこを行く爺さんにちっとばかり挨拶してくる間、タバコでも喫んでてくれない
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パナマを越えて=本間剛夫=103
この移住地は戦後、日本政府の事業として成功した約百家族の日本人の集団地だった。そこまで行けばブラジル国内の山地も平野も道路が整備されていて二、三日でラパスに着ける。ロベルトは軍人としてゲバラ以上に大