文芸

  • ゴイアーバ

    ニッケイ俳壇(841)=富重久子 選

       サンパウロ         松井 明子 蔓サンジョン眺めつ遠き旅に出る【「蔓サンジョン」はブラジル原産。街中ではあまり見られないが、郊外から奥地に行くと崖に蔓を伸ばしたり牧場の柵に巻きついたりし

  • 運動会=サン・ローレンソ・ダ・セーラ 丹生登

     近年の日系団体の集まりに若い人達の参加が少なく、特に県人会の集まりなどには高齢者が殆んどで、如何にして若者を集めるかが各団体の課題のようです。戦前は団体の中心会館が寄り所で、 戦後も私が移住してきた

  • ガウショ物語=(31)=娘の黒髪=《6》=爺さんの素早い山刀さばき

    「おれの方からあの赤毛野郎にくれてやる! 好きなだけ寝てこい、この雌犬め!」 額に青筋を立て、目をギラつかせた隊長は、娘の腕を離すと、ほどけかけた三つ編みをつかんだ。手にぐるぐるとふた巻き、首筋のとこ

  • パナマを越えて=本間剛夫=93

     小屋の中は黒かったが、老爺がカンテラに火を入れると闇の中から少年と少女二人の顔が浮かび上がった。青年が老夫婦に私を日本人の友人だと紹介した。私たちは旅装を解いて土間に座り込んだ。老婆は土間の隅で夕食

  • パナマを越えて=本間剛夫=92

     そういってエスタニスラウは一枚のカードに二人の女性の名と住所を書いて私の手に握らせた。          ◎ 私は日本を発つ前の十日間、南米における農民の革命運動とはいえない農民の暴動に関する資料を

  • ガウショ物語=(30)=娘の黒髪=《5》=目が覚めるほどの混血美女

     そのとき、わしらの頭の上の幌つき荷車の中から、話し声が聞こえ、若い娘の笑い声がした。そして、女がペチコートの音をたてながら降りてきた。 膝を抱えて座っていたシルーは女の気配に気付くと、頭を垂れて顔を

  • パナマを越えて=本間剛夫=91

     私は驚いて男の顔を見つめた。濃い髭ずらのエスタニスラウなのだ。懐かしいポルトガル語だ。彼は私の肩を抱いて髭ずらを私の頬にこすりつけた。私は直感した。エスタニスラウがここにいるなら、ゲバラもここだ。次

  • パナマを越えて=本間剛夫=90

    「ハポネスだね。ここへ何しにきたんだ」穏やかな口調だ。「サンファン」「ああ、日本人移住地だね。あんたは移住者じゃないね。どんな用事で? 職業は?」「友人を訪ねるんです。ラパスの大使館に勤めています」 

  • ノン ポコレンデ=マリリヤ 日高徳一

     過日、西銘光男氏と駒形秀雄氏の投稿を拝見し、ごもっともなご意見だと思いました。ブラジル人が口にするのでしたら、日本人をからかった言葉です。 私は戦時中をブラジルで過ごしたものですが、『ジャポネス ガ

  • パナマを越えて=本間剛夫=89

     彼らがサンファンに着いたとき僅か五、六ヘクタールばかりを伐採した空地があるだけで周辺は昼なお暗いジャングルで大木が聳え、その下は密生した草木で覆われ、わずかに獣類の通路と思われる踏まれた雑草の窪みが

Back to top button