昨年、突然大きな噴火をして日本中を驚かせた御嶽山。長野県生まれの私は、特別大きなショックを受け、すぐ懐かしい母方のおじいちゃんを思い出した。 祖父は、長野県飯田市の繁華街に広い自転車店を持っていた。住み込みの従業員6人ほどいて、いつも賑わっていた。飯田市が桜の咲く頃に大火となり、町中焼けてしまうまでは、大きな蔵のある街では成功 ...
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ニッケイ俳壇(839)=富重久子 選
サンパウロ 串間いつえ 身に入むや故人となりし事知らず【「身に入む」は、秋も深まって寒さが身に入むと言うことと、また身内に深く感じ主観のこもった意味あいもある「深秋の季題」である。 最近俳誌の中に名前のない人がいて、それとなく病気であることを聞いてはいたが、その人の病死を聞かされてびっくりしている様子である ...
続きを読む »パナマを越えて=本間剛夫=85
明日から旅行会社の案内で京都、奈良を廻り、大阪から帰途にすくというエスタニスラウの言葉に戸惑った。「もっとゆっくり話す時間がないのか……」 私はアントニオとも話したかった。エスタニスラウは私という人間について、どのように説明してあるのか。ただ、ブラジル南部の海岸に近い小さな町の小学校で教えられた教師だ、という程度なのだろう。し ...
続きを読む »ガウショ物語=(29)=娘の黒髪=《4》=全てがだらけきった野営地
もうちょっと歩いて、ようやく目的地に着いた。原っぱの真ん中に大きな焚き火が燃えていた。周りには串刺しの肉が並べられ、焼ける肉から落ちる脂がジュージューと音をたてていた。炭火の上には鉄のやかんが並べられ、湯がたぎっていた。その辺には銃が吊るされ、軍靴がほ乾され、外套が広げられ、ポンチョが枝にぶら下がっていた。 羊の毛皮や鞍の敷き ...
続きを読む »パナマを越えて=本間剛夫=84
「生活費は必ず送金する。決して心配しないでくれ。子供たちも成長すれば、それぞれの方向に進むだろう。それまでは親の勤めだから、きっと送金する。おれ一人で行かせてくれ」 私は家内の納得につとめる傍ら秘かに旅券の手続きを終えて、伊原氏と会合を重ねていた。伊原氏はゲバラの活動の成否はともかく、私がブラジル行きを希望しているのを知って、リ ...
続きを読む »ガウショ物語=(28)=娘の黒髪=《3》=「ファラッポスをやっつけろ」
「ですが……やつを殺さないのですか…… 縛るだけですか……」「そうだ!脅してやるだけだ……」「それで、愛人のほうは……ぶん殴るんじゃ……ないんですか……」「いや! 恥をかかせるだけでいい……」「じゃ、参ります。でも指揮をとるのはピクマンですよ……嘘でも自分が脱走兵だなんて言えるもんか……」「理屈が多すぎるぞ!……気をつけろ!…… ...
続きを読む »パナマを越えて=本間剛夫=83
私はためらいながら、「そのことなら、ゲバラと会っています」とエスタニスラウ杜の会談のもようを話すと、大使は「そうだったのか」と大きく頷いた。 私には三人の子がいた。一人は中学、二人はまだ小学生だった。すぐにも快諾の返事をしたかったが咄嗟のことで即断できなかった。心は焦った。大使のいうように、私は日本で生涯を終える気持ちは若いこ ...
続きを読む »ガウショ物語=(27)=娘の黒髪 =《2》=「とびきり上等な焼肉だ!」
牛飼いのジュッカ・ピクマンが先頭を行き、おれ達を枝や蔓が絡み合った茂みに導き込んだ。枝を切り落としたり、棘から身を守ったり、血を吸う薮蚊を手で叩きながら森の中を進んだ……。誰も口をきく者はいない。若いやつらは阿吽の呼吸で従う。――今だから、お前さんにだけ言うが――若い頃のわしは、どちらかと言うと暴れん坊で……そのころはどうにも ...
続きを読む »パナマを越えて=本間剛夫=82
翌日昼ちかくなってエスタニスラウから電話がきた。それは外務省の役人が通訳と案内役をつとめてくれることになったから、今日来なくてもいいというのだ。アルゼンチン人のゲバラが偽名し、しかもブラジル人として入国しているのに、外務省の役人が世話をするとは……と腑に落ちなかったが、電話は短く切れたので追求もせず私は仕事をつづけた。 それで ...
続きを読む »夫婦別姓=サンパウロ 駒形秀雄
現在、日本では『夫婦別姓』の議論が盛んになっています。現在日本の民法では男女が結婚した場合、その夫婦の姓(苗字)をどちらか一方の苗字に統一することになっていて、例えば『中村ともこ』さんが山田さんと結婚すると、女性は『山田ともこ』となり、中村という独身時代の苗字がなくなります。 夫婦別姓を認めよというのは例で言えば、中村さんは結 ...
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