文芸
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パナマを越えて=本間剛夫=72
あの時、気づいてさえいたら洞窟でのアンナの挑みを強く拒絶していたのだ。サンパウロの銀行支店長秘書と米軍航空将校……戦場……。それがどう一人であると誰もが結びつけることが出来よう。エリカを許してくれ!
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ガウショ物語=(21)=雌馬狩り=<2>=「馬は三本足で歩き出す」
腕に自信のないやつでも少なくとも二組のボーラを携えていたが、大抵は三組用意していたし、五組も持っているやつもいた。一組は手に持ち、残りは腰にぶら下げていた。 これらのボーラはすべて小さい石を使ってい
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パナマを越えて=本間剛夫=71
第四部 1 「お前は、福田兵長と捕虜を副官室へ連れて来い」 その日の午後、庶務室に現れた科長が下仕官に命じた。 胸が踊った。あれから一カ月余り、毎日案じていたエリカたちと会え
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パナマを越えて=本間剛夫=70
軍曹はまだ粟野中尉が連合軍に対して捕虜の件を通報していることを知らない。また、司令部が二人の捕虜をアメリカへの報復として処刑する考えがあるのを、粟野中尉が阻止するよう働きかけていることも知らない。だ
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ニッケイ俳壇(836)=星野瞳 選
アリアンサ 新津 稚鴎 白き月見上げ大うねり甘蔗畑マラジョウでニグラとカシンボ踊りもし白蘭の生命の限り匂ふなりこぼれ種子まで生え蕎麦の花盛り寄りそいて鶏頭二本枯れて行く 【正岡
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ニッケイ歌壇(487)=上妻博彦 選
サンパウロ 武地 志津 それぞれに個性目を引く犬達の主(あるじ)と共に朝のウォーキング一心に女主人の後を従く桃色リボンの仔犬いじらし老齢の飼い主が押す手車に躾よき幼のごと乗る仔
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パナマを越えて=本間剛夫=69
私は中尉と話したかったが、機会がつかめずに焦っていた。通訳として私を転属させておきながら、司令部は二人の所在を匿している。 数日たったある朝の点呼のあと、私はぼんやりと広場を眺めていた。その時、粟野
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「明け暮れの記」読後感=サンパウロ 小野寺郁子
包装紙より取り出すや、パッ、と目の覚めるような色彩あざやかな表紙、それがこのたび武地志津さんが上梓された著書『明け暮れの記』である。 320ページの手に重る本の内容は、随筆と短歌を主にした自分史、と
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『蜂鳥』
句集『蜂鳥』323号が刊行された。 「蜂鳥集」より3句「停電の静寂なぐさむ軒風鈴」(須賀吐句志)「カーニバルリズムに乗れぬ半世紀」(池田玲子)「又一つ年をかさねて雑煮食ふ」(中馬淳一)、特別作品「ア
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パナマを越えて=本間剛夫=68
一切、粟野中尉に委ねているのだから……。常識人である中尉は、二人の上司に捕虜の取り扱いについて淳々と道理を説いてくれているのだろう。戦争は終わった。軍隊はもう存在しない。階級性を盾に中尉を越権行為と