文芸

  • パナマを越えて=本間剛夫=4

     ブラジルの農業移民は、ドイツ人もフランス人も日本人も、農業省の管轄下にある移民会社から割り当てられた耕地で、苦難なコロノ(小作人)として十余年、牛馬のように働いて独立農としての資金を蓄える。その実態

  • パナマを越えて=本間剛夫=3

     「つらいから、見送りませんよ」という夫妻が、早く帰ってね、と繰り返した。車が走り出しても二人が手を振ってるのが見えた。 大通りは、もう車の列だ。車が桟橋に入ると遥か突端に、日の丸を掲げた黒い貨物船が

  • パナマを越えて=本間剛夫=2

     なかには永住の覚悟で大農場の農夫として汗を流している知人、友人が、グループを組んで戦争に参加するというニュースを邦字新聞で知らされると、自分は卑怯者ではないかと強くさいなまれたが、それでも固く瞼を閉

  • パナマを越えて=本間剛夫=1

    「旅券を持って、来てくれ」 朝、まだ早いのに、店長からの電話だ。 彼は早口にいって電話を切った。用件を訊くいとまもなかった。一瞬、不可解な電話を反芻した。旅券を持って来い、というのには海外出張に違いな

  • 花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=75・最終回

     目が見えないのは目の前の蛇に怯えないという諺と同じく、私の低能さは怖さをしらず前に進み生きてきてそのぶん失敗も多く、その失敗により現在の生き様があることにようやく気がついたことはあまりにも遅すぎであ

  • 花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=74

     しかし、この言葉は私たち花嫁には礫となり飛んできて辛い言葉に長くなりました。先に書きましたコチア青年花嫁五〇周年記念祭を境に、言葉の礫はおおかた無くなり、花嫁移民ですと平気で言えることができているよ

  • ピンドラーマ12月号

     コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』12月号が発刊された。 「ブラジル版百人一語」「クラッキ列伝」「さんぱうろぐるめうをっちゃー」「ブラジルキリンイトゥー工場見学」など。サッカー、グルメと

  • 花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=73

     私たちはこのような理解ある温かいことばを聞けるまで何十年かかっただろうか。このことばを素直に喜びたい。 毎年十一月第四日曜日は、小南ミヨ子氏の送り出した花嫁移民「ききょう会」の忘年会である。これに出

  • 花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=72

     五十年前、移民船は蚕棚式の船室で、五十数日の船旅をしてブラジルにきた第一回目の十二人の花嫁で今年金婚式を迎えられたのは五組。二十歳前後で移住した花嫁も二人他界したとのことである。 金婚式の花嫁はもう

  • 花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=71

     「ラテン系は美しく、惹かれるものはありますが」と言い、「男性が若いうちはいいが、年齢とともに体力、精神力ともに弱さが出てくるし、食事にしても日本食を恋しくなりますから」と語っている。 ことに体調を崩

Back to top button