文芸
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=19
「従兄同士の結婚は、私ら最初から反対じゃった。籍を抜いてブラジルへ行きんさい。困らんようにサンパウロで落ち着く所ば紹介もするとよ」とぼつぼつと言って、私を勇気つけてくれた。 いま熊本弁でそれを書こう
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=18
当時この京野さんは六十歳を出た位だっただろうか。高田家で一ケ月余りお世話になった間に、京野さんが私に話しかけたことで覚えているのは 「ここいらのピオン(日雇人夫)が鍬をもって歩いている時は離れていな
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=17
あくる日、「簡単な仕事じゃきに、これでも手伝ってもらおうかの」と叔母の言葉に促されて温室にはいると、カーネーションの咲いたもの、咲きかけたものや、まだ硬い蕾などのこもった匂いが全身にしっとりと染みつ
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=16
翌朝、「お手洗いはどこですか」と聞くと、臨時の住まいなのでトイレは無いと言い、案内されたのは、汚物の見える直径二十センチほどの穴のあいた、そこが元トイレだと分かる所だった。それをどう使うか考え込んだ
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=15
「いま叔父さんから歓迎会だと聞きました。歓迎会で結婚指輪を貰うのもおかしいし、考えなくてはいけない結婚だと気が付きましたので、その指輪はお断りいたします」 結婚を断って言葉も解らない国で、どう生きる
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=14
大阪の叔母が、叔父の言いかけた言葉を止めたのは、このことだったのだと目の当たりにしたのである。 港からカミノ・デル・フォルチンという通りまで、どれ程の距離かいまも知らないが、街から出て車は草原の中の
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=13
ブエノスの街のどこへ連れて行かれたのかは分らないが、裏町の狭い石畳道の両側に商店の並んだゴミゴミとした所だったこと、その店舗裏の暗いじめじめしたイメージが今でも思い出される。 海抜のほとんどないブエ
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=12
見える人にはこの性格は分かったであろうが、寂しさゆえにか人を疑う事を知らず、単純であり,甘えたがり屋だったと、今はその頃の自分の心の姿を言えるが、まだ若い私にこんな自分の姿が見えるはずもなく、実に無
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花嫁移民=海を渡った花嫁たちは=滝 友梨香=11
それから一年ほどしたある日、この叔母の家を訪ねると、パラグアイからウルグアイに再移住したというもう一人の叔母で、実母のすぐ下の妹一家の話が出て、「ああ、あの中学の時の南米へ行ったおばさんの一家か」と
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勝ち負け小説『イッペーの花』=元サ紙記者紺谷さんが上梓=ニセ宮や桜組挺身隊に焦点
「アンタには、宮様の血が流れとるがやちゃ」――子供の頃、おばあさんのつぶやいたそんな一言が心の奥底にひっかかっていた達也(主人公)は、彼女の死に直面した機会に、自らのルーツを確かめにブラジルを訪れる