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文芸

朝陰

 句集『朝蔭』7月号(第417号)が刊行された。 「雑詠 寿和選」から3句「炭焼いて仙人めく吾が青春期」(栃沢秋穂)、「香水はつけず眺めて移民妻」(名和喜美子)、「歳時記が頼りの句作冬籠もり」(鈴木文子)、「各句会便り」ほか。

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ピンドラーマ

 コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』8月号が発刊された。 「ブラジル凸透鏡」「移民の肖像」「ブラジル面白ニュース」など。サッカー、グルメといった毎月のコーナーも掲載。 問い合わせは同出版社(11・3277・4121)まで。

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=41

 この調査の結果に数多くの知識人が関心を示し、当時の州統領、アデマール・デ・バロス閣下が「収監されている大多数の日本人の身を案じられている」と知ると、天を仰いで「事態の好転も近い!」と同志と共に喜び合った。そして、その日が一日も早からん事を祈るのであった。 旬日ならずして事態は好転し、続々と収監を解かれた大勢の同胞が無事帰宅を待 ...

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刊行『のうそん』

 『のうそん』7月号が発行された。 訃報「追悼、沢木茂君」(須賀得司)研究「認知症について」(永田久)、随筆「思い出」(井口原道子)「私の健康法」(増田二郎)「ブラジルびっくり」(大門千夏)「ビアジャンテ」(国吉真一)俳句「のうそん俳壇」(樋口玄海児)小説「小波の彼方⑤」(松村まさゆき)「白い奔流⑤」(松尾祐至)ほか。 問い合わ ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=40

 何事に対しても忍耐を第一とし、同じ日本人として相争うことなく、国体を信じ、皇室を尊び、「敗戦認識派」を無視し日本の勝利を信じ、結束を固める。思想の善導を第一義とする従来の研究会はもっと飛躍すべきだとの説に従い、その具体的な説明には今後の大きな課題としてお互いに勉強し、日本人としての自覚のもと、今の自分を「これで良いのか」と見つ ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=39

 その話が伝わり始めた頃、マリリア、オズヴァルド・クルス、トゥッパン、バストス方面で養蚕小家の焼打ちの噂が、口から口へと広がり、真偽の程はわからないが、次から次へと伝わる噂に人々は脅え、抑えることはできなかった。だが、ここドゥアルチーナでは、勝ち組は心を一つにして警戒に当たっている故か、今まで皆無事だった。 今後もそう続けてほし ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=38

 10時ごろから堪忍の緒も切れ、皆で鉄格子を叩いて大騒ぎを起こし、警察の不法に抗議するが、ただ「静かにしろ」と怒鳴り返されるばかり。そうした騒ぎの最中に、捕まえられずに残った者たちの機転によって差し向けられた弁護士が来た。警察側も不法には抗言出来ず、不当を認め、即出所命令を下し、一同安堵して帰って来た。すると大勢の人たちが詰め掛 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=37

 一例として、認識派の者には営農資金を融資するが、そうでなければ長年の組合員であっても何とか理由をつけて融資を断るという、一種の踏み絵を強いるという悪辣極まる手段で認識派に引き込もうとしているという。 あるいは文教普及会に就職が決まっていたのにもかかわらず、認識派に反対していた為、何とか理由をつけられ、就職を断られたという類の事 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=36

 そんなある日、あわただしい蹄の音がコーヒー園に響いた。ただ事ではなさそうだ。「中野さん、中野さん!」と叫ぶ声と同時に、一人の青年が全身汗と埃にまみれ馬から飛び降りると、おやじに縋り、あまりの疲労に声も出ず、しばらくゼイゼイと吐く息も苦しげだった。しばらくしてようやく一口の水をすするように飲み、大きい吐息をつくと涙を流しながら語 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=35

 この2年間で5千本位だ。コーヒーの樹は3万8千本。この調子だとあと10年かかってしまう。百姓には生き甲斐だが、恐ろしく気の長い話だ。 考えてみると人間も同じだ。生まれてから成人になるまでに少なくとも18年はかかる。計算づくではなく、親の苦労を仰ぐことの少ない人間の育成に比べ、農業とは作物が確実に答えてくれるやりがいのある仕事だ ...

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