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文芸

連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=34

 すると、上の方はなぜか青々としている。目の錯覚かと思い、下の方を見ると、やはり真っ黒で目も当てられないほどだ。その中で10本位は青々としている。 よくよく見まわすと、本当に被害に遭ったのは盆地になっている風通しの悪い場所に植えられている4~5百本位で、あとは無傷で青々としていた。蕾はやられているだろうから実のつきが悪くなり、今 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=33

 明日は明日の風が吹く。耕主様となったので希望で胸が高鳴る。2~3日休んだらコーヒーの収穫を始めよう。 使用人任せには出来ない。バーラ・ボニータで見せた日本人の腕前を。3万8千本のコーヒーの樹を3年かけて人工肥料で蘇らせるのは並大抵の事ではないが、兄妹が協力し合えば力は無限だ。幸いに物事に熱心な兄貴の采配に依ればマンゲイラには牛 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=32

 その時に、これまでの経緯をすべて打ち明け、銀行に預かっているお金も当てにならないのでこの土地とパストに居る牛を入金として、3年払いの所を4年払いにしていただくように交渉を進めていただきたいと切に願った。 すると、「期待に副うべく、皆さんの事情を説明してみます。それが出来ぬ様だっただったら、こちらも飯の食い上げで、この商売をやめ ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=31

 ありがたい心尽くしだ。しかし、資金も無いので今年一年ぐらいは日雇で仕事をしてお金を貯める計画だった。それで余り乗り気ではなかった。 そんなある日、旧パトロンの三坂さんがいい話を持ち込んできた。ドゥアルチーナ管内から30キロ程離れた所の耕地が、老人一人の管理で充分に行き届かないから手放したいとの事。息子がいるが親に関心がないらし ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=30

 積もる話もあるのでと家に誘われ、好意に甘えて植田さんのお宅へ向かった。程なく話を耳にしたという方々が2、3人訪れ、我々が無事にドゥアルチーナに帰ってきたことを心底喜んで下さった。でも油断は出来ない。ここでも日本語での長話は出来ないらしい。その後も3人、4人と、親父の知り合いが尋ねて来られ、日本人の変わらぬ人情には泣かされた。  ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=29

 年齢から言えば、もうすぐ母親の近くに行くのだと言う事もわかっていた。皆嬉しかったが上の3人には一抹の不安がある。程なくカンポス・サレスに着いた。兄弟揃って歩いたら目立つから不安だ。でも、別々になるのも心細い。運良く小さな町で人出も少なく、ひっそりとした店が並んでいた。4人揃って夕食をとり、お店の人に夜行の汽車の出発時間まで待た ...

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日ポ対訳童話絵本=日本のNPO団体が作成

 NPO法人「地球ことば村」が、在日ブラジル人子弟向けに日ポ対訳童話絵本「日本の童話」と読み聞かせ用DVDを制作した。同団体は、少数言語の保存や異なることばの話者同士の交流などを推進しており、作成した絵本をブラジル人学校などに無償で配布している。 収録作品は「おむすびコロリン」「ごんぎつね」「注文の多い料理店」など7作品。一般の ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=28

 話したい事は山ほどあるが皆無口のまま。夕飯も喉を通らない。行く者も残る者もそれぞれ今後のことが心配なのだ。決死の行為であるこの旅がどんな意味を表し、どんな結果をもたらすか、神のみぞ知る。今生の別れとならんとも限らん。 残り少ない時間を家族水入らずで過ごそうと言う思いに反し、2~3人の外人の仕事仲間が母の快復と兄嫁のお産が順調に ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=27

 あれ程心身ともにどん底に落ち込んでいた母の奇跡的な甦りはただただドトール・メルカダンテの優しさと励ましの言葉のお陰だったと思う。医は仁術と云うが、正に佛様に見えた。 唯一つ気になったのは最後の「命は一つ。大事にしなさい」。何かの暗示だったのだろうか。胸騒ぎが治まらない。でも、母の少なからず元気な姿を見ての家族一同の感激は、いか ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=26

 神経をズタズタにされた我々には、口を利く力さえ残っていなかった。それぞれ無言のまま、機械的にその辺に散らかっている物を先ずは片付けようと共通の思いだったらしい。その作業に取り組んで気が付かなかったが、あっという間に外から大勢の人が押し寄せ、その辺に転がっている目ぼしい物を全部持って行く者に相次いで、口々に「日本人の物は何もない ...

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