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文芸

『椰子樹』

 椰子樹6月号(361号)が刊行された。 「わが愛する歌人(13)窪田空穂」(武川忠一)、歌集「アマゾンの土に行き来て」(徳永悦子)、題詠「足音 杉田征子・選」、「第66回全伯短歌大会プログラム」、作品集ほか。

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=25

 1942年3月も、もう何日かで終わろうとしていたある日、昼食の後の一休みから「さあ、もう一仕事だ」と立ち上がろうとしたその時、けたたましい馬の駆け足が聞こえた。 その瞬間、不吉な予感が心を掠めた。10歳になったばかりの稔が裸馬から泣きじゃくって飛び降りたが、泣いて、震えて、声さえ出し切れない。みゆきが抱きかかえて水を飲ませ、胸 ...

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『朝蔭』5月号

 『朝蔭』6月号(第788号)が発行された。 巻頭「句帳」(念腹)その一句「柿赤しパラナ路に入る一軒家」、「雑詠 寿和選」その3句「なまくらのナイフを拒む梨の皮」(秋村蒼一郎)、「難聴は孤独に拍車秋ともし」(中山哲弥)、「渋柿と知らずに子等が盗みたる」(秋山功)、「とんだハプニング」(秋村蒼一郎)、「芭蕉塚」(纐纈喜月)、「句会 ...

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刊行『蜂鳥』

 句集『蜂鳥』319号が刊行された。 「蜂鳥集」より3句「ある物を出して着て見る冬仕度」(渋江安子)「誇ある日本文化よスキヤキは」(堀百合子)「打たれるを待つが如くに秋の蝿」(若林敦子)、特別作品「虎落笛」(西朋子)ほか。

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=24

 日本軍が世界を相手に勝ち進んでいると言うのだが最近、ブラジル政府が敵性国家として国交も断絶していた日本、ドイツ、イタリア各国の人たちに対して弾圧の手を加えているような話しをしていた。海岸地方に住んでいる移民の人達、特に日本人の移民には強制的に、24時間以内に家を出るようにとの命令が下されたらしい。着の身着のままで追放された日本 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=23

 気に入った。もう決まったも同然。後は契約書を見るだけだ。契約書は持ち帰ってドゥアルチーナの弁護士に見てもらわねばならぬ。一番大事な点は初年度。再生林の開拓費として無料と明記されているかの確認だった。その確認が出来、いつでも移動できるようになった。第六節    再起への道 1941年の世界情勢は混乱としていて、日米の間ではいつの ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=22

 そのときに隣のイタリア系の人からある申出があった。早急には買い手は見つからないだろうから、いま飼っている牛馬の世話といくらかの借地料で土地を貸して貰えないだろうかとの話しだった。それも、自分は20年近くそこに住んでおり、人様に信用してもらっているので、確認を取ってから返事をしてくれとの事だった。あの状態の中では地獄に仏の話だっ ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=21

 ドゥアルチーナとグラリヤを繋ぐその道路上に沿って電線があったが、個人用には許されていなく、50メートル程しか離れていない電線の下でランプ生活という不合理が罷り通っていた時代だった。 町の電気のきらめきを眺めながらの生活は確かに辛かったが、何年も電気のない生活を強いられていたせいか、それ程苦でもなく、それより今の住宅の状態、果物 ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=20

 兄貴も20センチ位のを1匹釣っていたが、為仁さんの話が効きすぎて足元に気をとられ、釣りどころではなかったようようだ。それから一晩中焚き火にほてりながら皆が帰るのを待っていたが、よほど面白いのか、なかなか帰ってこない。待つことしばし、呼び声がするので川辺に下りていった。何と、大小30匹位の魚の山。大した腕前だ。兄貴が6、7匹釣っ ...

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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=18

 来たと思ったら、鶏の羽根を方々に10本位立て、1時間ほどしたら1本1本を注意深く見て、水分がついている羽根を探し回り、その場所に水脈があると教えてくれた。家から10メートル位の場所にあったので、そこを掘ると言う。場所としては申し分なく、何メートルぐらいで水が出るかと聞いたら、10から12~3メートル位で確かに出るはずだと、そし ...

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