文芸
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中島宏著『クリスト・レイ』第68話
プロミッソン マルコス・ラザリーニは、はっきり言って当時の日本移民のことについては、ほとんど何も知らなかったといっていい。日本語を覚え始めるまでは、特に日本に対する関心や興味があったわけでもない。無
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中島宏著『クリスト・レイ』第67話
うーん、これはたしかにアヤが言うように、微妙かつ複雑な問題ですよ。 そうなると、このブラジルに来ても、同じカトリックとはいうものの実際にはそこに、かなりの隔たりがあるということが、現実に分かってく
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中島宏著『クリスト・レイ』第66話
「だけど、なかなかうまくいかなかったということなのかな」 「そうなの、その通りなの。最初はお互いに大いに喜んだのだけど、時間が経っていくうちに、双方にだんだん違和感が生まれていって、意志の疎通もうまく
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中島宏著『クリスト・レイ』第65話
それでもね、マルコス、それでも私たちの先祖はキリスト教を失うことはなかったわ。常に、キリストの像は心の中に生き続けて、それが片時も消えるということはなかったということね。 だからね、私の言いたいの
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中島宏著『クリスト・レイ』第64話
「その辺はちょっと違うわね。それはマルコスの誤解じゃないかしら。誤解という言葉が悪ければ、それは解釈の違いというふうにも言えるわね。つまりね、私が言いたいのは教会というのは絶対的な存在ではなく、最終的
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中島宏著『クリスト・レイ』第63話
「最悪の場合は、この地を離れなければならないことになるかもしれないわね。 この地での生活の基盤が脆いものであれば、いつまでもこの土地にしがみついているわけにもいかないでしょう。その場合はつまり、集団
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中島宏著『クリスト・レイ』第62話
「アヤの場合は、生きていく上で教会の存在というのは大きなものだろうけど、しかし、それに徹することがないとすれば、やはり何か別の道を探さなければならないということになりますね。今のところは問題ないにして
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中島宏著『クリスト・レイ』第61話
「そうですね、もし、世界中の人間が同じ発想だったら、アヤも言うように世の中は何も変わって行かなくて面白くないし、第一、移民するという考えも起きてこなかったでしょうね。そうなると、たとえばこの僕も、ここ
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中島宏著『クリスト・レイ』第60話
「アヤの場合はどうかな。日本からこのブラジルという、まったく環境も風習も言語も違う国にやって来て、ここでこれからの自分の人生を新たに築き上げようというとき、何というか、その、迷いというようなものはな
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中島宏著『クリスト・レイ』第59話
ただ、日本人移民の場合は、文化性や言語、あるいは人種というものの隔たりが大きなものであった分、その障害物を超えるのに、それなりの時間がかかり、それなりの苦難が伴ったことは事実であろう。 もっとも、