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文芸

刊行物『朝陰』

ニッケイ新聞 2013年11月29日  句集『朝蔭』11月号が刊行された。「雑詠 寿和選」から3句「大切な初心に返る日念腹忌」(鈴木文子)「桔梗芽の大和心の濃紫」(二見智佐子)「これならと云えぬ吾が句やおぼろ月」(綾瀬俊夫)ほか。

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(36)

ニッケイ新聞 2013年11月1日  簡単な機内サービスが始まった。  女性機内サービス要員が僧侶の作務衣姿の中嶋和尚に、 「(宗教家のようですが、宗教上、禁止されている食べ物がありますか?)」  言葉が分からない中嶋和尚に、西谷が助っ人に入った。 「宗教上、食べてはいけない物がないか聞いています」 「いえ、問題ありません」   ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(52)

ニッケイ新聞 2013年11月29日 「根が煮えるのですか」 「そうなんです。それから、陽が高く昇ると暑さで作業が出来ず、一旦止めます」 「何時頃ですか?」 「十時にはもう暑くて仕事が出来ませんでした。それから小屋で朝食を取り・・・」 「小屋とは?」 「住居までは二キロの距離がありましたから、コショウ園の木陰に仮小屋を作っていま ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(37)

ニッケイ新聞 2013年11月2日 「(ブラジリアのジュセリーノ・クビチェック空港にあと五分で到着します)」のアナウンスの数分後、ボーイング機は『ドンー』と力強く滑走路に着地した。  二人は一旦バックを取り、混雑しているブラジリア国際空港の待合ロビーでリオデジャネイロからの乗継便を待つ事になった。  ロビーは、黒、白、褐色、黄色 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(53)

ニッケイ新聞 2013年11月30日 「そうでしたのですか」 「気がつくとベレンの日伯援護協会病院にいました。一週間後でした」 「助かってよかったですね!」 「ええ、学移連(日本学生海外移住連盟)の後輩がサンパウロ大学の人文科学とか云う所から依頼を受け、何かの調査の為に尋ねてきたのです。それで、偶然に助けだされました。奇跡でした ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(38)

ニッケイ新聞 2013年11月5日 「三者が和解してしまうと、どうしようもありませんね」 「そうですよ、特に司法が独立していないのは国が死んだも同然です」 「国民は?」 「寛容ですね」 「革命とか、起こらないのですか?」 「全てとは言えませんが、ブラジルは革命や戦争には無縁な国です。他の国では国を分裂させて内戦になる事でも、この ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(39)

ニッケイ新聞 2013年11月6日  今、到着した飛行機から、弓や槍を持ち、黒と赤の線で半裸の身体を塗った五人のインディオがどやどやと出て来た。 「彼等はインディオですね」 「そうです。アマゾンを代表して、政府に陳情にやって来た様ですね」 「でも、あの恰好でですか?」 「ええ、彼らもアピールする手段が上手くなりましたね。あのパフ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(40)

ニッケイ新聞 2013年11月7日 「『お釈迦』さまはシャキャ族の王子だった事で『シャカ』の名が付きましたが、別名『仏陀』とも言われますね。『ブッダ』の語源は古代インドのサンスクリット語で『目覚めた者』、つまり『覚者(さとるもの)』と云う意味で『悟り』を開いた方を指します。そう云うわけで、仏教に尽し、ある程度『悟』った方も仏さま ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(41)

ニッケイ新聞 2013年11月12日 「そんなもったいない仏さんではありませんよ」 「いえ、あの方達の落着いた態度と平和な顔を見ますと『観音』さまを感じます。あの細長い太鼓をしっかり抱いた若者なんか幸せ一杯の顔です」 「そう言われれば、このロビーで一番幸せな顔してますね」 「あの、ラップトップを競って操作している二人のビジネスマ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(42)

ニッケイ新聞 2013年11月13日 「聞いた事がありますが、そのリンネについて説明していただけませんか」 「はい、『輪廻転生』と言って、これは古代インドから受継がれ、仏教にとって根本的な考えです。ヒンドゥー教も『霊魂再来説』として受け継がれています。それは、六道で生を繰り返しながら修行し、理想の境地である涅槃に至り、極楽に達す ...

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