ニッケイ新聞 2013年8月7日 幸代は白徳根の話を聞きながら、共和国に帰還した家族がどんな生活を送っているのか想像するだけで恐ろしくなってきた。トランジスタラジオさえ聞くことができない。電気が引かれているのかもわからない。衣類、食料、医薬品が必要。換金しやすいのが自動巻きの腕時計。アフリカの避難民と同じ生活を送っているのかも ...
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第148回
ニッケイ新聞 2013年8月29日 そんな言葉を児玉に漏らしていた。 彼らの多くは韓国にそれほど愛着もなく、愛国心があるようにも思えなかったし、ブラジルに帰化する者も多かった。 終戦直後、ドイツ、イタリア、日本の移民の状況を見ていたブラジル人があるピアーダ(笑い話)を作った。 〈イタリア人は町に繰り出し、戦争が終わったこと ...
続きを読む »連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第133回
ニッケイ新聞 2013年8月8日 そう言ったきり自分部屋に入り、風呂にも入らずに寝てしまった。その様子を見て、幸代は兄の容福はやはり死んでいると確信した。自分の思いを心に秘めておくことのできない母親が沈黙する理由は、筆舌に尽くしがたいショックを受けたからだろう。 翌朝、仁貞は朝早く目を覚まして居間のコタツに入りお茶を飲んでい ...
続きを読む »連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第149回
ニッケイ新聞 2013年8月30日 マリーナがリタと台所に入った。児玉はサーラでイマージェンス・ド・ジャポンという日系人向けのテレビ番組を見ていた。日本の歌謡曲を二世が歌っていた。ヒロシという名前の歌手が五木ひろしの「よこはまたそがれ」を歌い始めた。パウリスタ新聞の広告部でよく見かけた男だ。藤沢工場長の長男だった。パウリスタ新 ...
続きを読む »出版『ブラジル人のためのニッポンの裏技』=日、ポ語学習者に最適!
ニッケイ新聞 2013年8月3日 ニッケイ新聞はこのほど、『ブラジル人のためのニッポンの裏技—暮らしに役立つ日本語便利長—』(O Jeitinho no Japao para os brasileiros、松田真希子著)を発刊した。220頁、50レアル。 日本の春風社(神奈川県)から08年に刊行されたが重版されないことから、 ...
続きを読む »連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第134回
ニッケイ新聞 2013年8月9日 訪問団は夜行寝台列車に乗せられ、一部屋ずつ与えられた。部屋には金日成の肖像画が飾られていた。 「みんな平壌に着きさえすれば家族と再会できると思って、夜行列車に十八時間近くも揺られてがまんしたが、着いた時には皆ぐったりしていた」 三日目の午前十時頃に寝台列車は平壌駅のホームに入った。そこでも家 ...
続きを読む »連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第150回
ニッケイ新聞 2013年8月31日 ブラジルの風土がそうさせるのだという。長い間農業に携わってきた野村は、農民らしい説明をした。日本のトウモロコシは甘くて粒も揃っている。やわらかくて茹でて食べることができる。その種を日本から輸入して、ブラジルに播いても粒は不揃いで、しかも実も固いものになってしまう。 「日本のトウモロコシとは全 ...
続きを読む »刊行=ベレン、マナウスでも販売中!=子や孫に移民史を『アマゾン』
ニッケイ新聞 2013年8月7日 【既報関連】2009年のアマゾン日本人移民80周年を記念し、本紙が今年6月に発行した『アマゾン』(日ポ両語、定価70レアル)が好評発売中だ。 同年に各地で行なわれたイベントをカラー写真などで紹介するほか、主要日系移住地の過去や現在を見つめたルポなど、アマゾンの発展に貢献した日本人の歴史が分か ...
続きを読む »連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第135回
ニッケイ新聞 2013年8月10日 二人の案内員の手前、そう言うしかないのだろうと察して、仁貞は家に案内するように言った。しかし、寿吉は「ここからは遠いし、同志たちが用意してくれたこの場所で話は十分にできる」と下手な役者が台詞を棒読みするような口調で言った。 「何を言っているんだい。夫婦が十七年ぶりに会ったというのに、自分の家 ...
続きを読む »刊行物=『ブラジル日系文学』
ニッケイ新聞 2013年8月8日 『ブラジル日系文学』第44号が発行された。 中田みちよさん、古川恵子さんによる2012年のジャブチ賞小説部門受賞作『Nihonjin』の全日本語訳第1回(全7回)、著者中里オスカール氏のインタビューの翻訳、醍醐麻沙夫さん著『夜の港』のポ語翻訳のほか、特別寄稿『シベリア抑留者に対する特別給付金 ...
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